■今の日本の「生きづらさ」を

――そもそも、なぜ通常のリメイク作品にしなかったんでしょうか?

白石 和田監督版が最高峰としてある限り、同じ世界観でのリメイクは必要ないと思いました。その結果、「哲がタイムスリップする」に落ち着いたんですが、理由の一つに、今の日本の“生きづらさ”を表現したかったことがあります。

 たとえば巷では、変な道徳観や正義感があふれていますよね。自由に発言すると、すぐに炎上してしまう。僕自身も今回の会見で、「本当は“瀧容疑者”と言わなきゃダメだろうけど、ずっと“瀧さん”と呼んでいるしな」と思ったりもしましたし、どこか言葉を選んで発言しました。

 そんな時代に、45年から哲が来る。彼は賭博法違反で逮捕され、謝罪会見をするはめになるんです。「金を賭けない麻雀がどこにあるんだ!」と言いながら捕まりますが、そんな彼から見て、“今は本当に幸せな世の中かどうか”が分かるのでは、と思ったんです。

■阿佐田哲也には怒られるかもしれない

――阿佐田夫人である色川孝子さんの、本作を観た感想は?

白石 阿佐田さんがご存命なら怒られたかもしれませんが、孝子さんには強くハグしていただきながら、「素晴らしかった!」「あなたの頭の中は、どうなっているのかしら! 開けて見てみたい!」と、おっしゃっていただきました。

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