■世界の王貞治を封じ込めたクセモノ

 黒江氏は、「王キラー」として世界の王を封じ込めたクセモノの名前を挙げてくれた。広島の大羽進投手がその人だ。王と同級生の大羽は入団6年目、広島が初めて王シフトを敷いた試合に先発すると、内角球で勝負を挑み、王の5打席連続ホームランを打ち砕いた。

「巨人戦には滅法強く、巨人キラーとも呼ばれていました。王さんと対戦するときは超スーローボールを投げて王さんのペースを崩して、打ち取っていましたよ」(黒江氏)

 王との対決といえば、小川健太郎(中日)のことにも触れなければならないだろう。「基本はアンダースローだけど、ときにサイドスローやオーバースローで投げたりする変則的なクセモノ投手。いい投手だったんだけどね」(ベテラン記者)

 1969年6月15日の試合では、腕を背中から繰り出す「背面投げ」で、当時絶好調だった王を苦しめている。その後、同年8月、月にも王に対して背面投げを試みている。

 だが、70年5月、反社会的組織と共謀してオートレースの八百長を仕組んだという容疑で逮捕され、永久失格処分を受け、その後、プロ野球のマウンドに戻ることはなかった。

■ゴジラ・松井秀喜にも天敵が!

 ゴジラ・松井秀喜にも天敵のクセモノ投手がいた。元阪神の遠山獎志氏だ。97年にロッテを解雇され、古巣・阪神の入団テストを受けて合格。そんな遠山がクセモノの本領を発揮し始めるのは、野村克也が監督に就任した99年。シュートで、松井に徹底的なインコース攻めを繰り返し、99年は13打数無安打と完璧に抑え込んだ。当時、松井は「遠山さんの顔を見るのも嫌」と口走ったほどだった。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4