小池一夫さん(撮影/弦巻勝)
小池一夫さん(撮影/弦巻勝)

 4月17日に逝去した漫画原作者の小池一夫氏。さいとう・たかをのさいとうプロに所属後独立し、『子連れ狼』『高校生無頼控』『修羅雪姫』といった不朽の名作を世に送り出した。

 77年に開いた『小池一夫劇画村塾』では、高橋留美子、原哲夫、板垣恵介、堀井雄二、さくまあきらといった面々を育成し、日本漫画界に大きな足跡を残した。近年では人の心を打つツイートで90万人を超えるフォロワーを獲得し、その死を報告するツイートは1日で12万RTを超える反響を呼んだ。

 2011年に収録された小池一夫氏のインタビュー記事を再掲し、その死を悼みたい。

■「人間は、神と悪魔というキャラクターを作ることで、自然現象に耐えてきました」

撮影/弦巻勝

 僕とさいとうたかをと、あと安孫子(注:安孫子素雄=藤子不二雄A)、このへんが漫画第1世代ですかねえ。水木しげるさんってお化けがいるけど、これは勘定に入れなくていいんじゃないですか、妖怪ですから(笑)。

 第2世代にちばてつやとか水島新司がいて、その下が本宮(注:本宮ひろ志)とか弘兼(注:弘兼憲史)になるのかなあ。で、その第4世代ぐらいに僕の弟子の高橋留美子とか原哲夫がくるわけですよ。で、またその下……もうわけわかんない。弟子は370人ぐらいでしょうか。他の漫画家は誰も、そんなことして育てないからね。

 梶原一騎さんにいわれましたよ。「お前、そんなに自分のライバル増やしてどうするんだ」と。「仕事が減るだけじゃないか」ってね。だから「裾野が広がれば仕事が増えるんじゃない」っていいました。「それと、俺や梶原さんを抜くような原作者はそんな出ないよ」っていったら、梶原さん、ニヤッとして「それはそうかもな」っていってました(笑)。

 僕は原作者ですから、自分の組む漫画家を探そうと思って教えてきてたんですけど、そしたらやっぱり上手いのがいるんですよね。たとえば高橋留美子がいる。そうすると、惜しくなるわけですよ。僕と組んだら違う道を行くことになるし、「組めないなあ」って。全部、独立させちゃう(笑)。予定が狂っちゃった。

 弟子たちにいうのは、悪役を先に作れってこと。主人公を最初に作ると、固まって動かなくなる。それと、主人公には必ず弱点を作る。『子連れ狼』の大五郎、3歳の子供が足元にくっついてたら、斬り合いで弱点になる。世界中が「危ない危ない!」って。弱点があると、無敵のやつがここまで弱くなる。だから連載が終わらないわけです(笑)。

 最盛期は締め切りが20本ぐらいあって、1日に3本ぐらい書いてたんじゃないかな。僕は全部直筆です。いまでもボールペンで。パソコンじゃ、誰が書いたかわからないじゃないですか。漫画家は喜ばないです。10本以上書いてると、「弟子に書かせたんじゃないか」という恐れも出てくるわけでしょ。全部、生筆だから、漫画家も「あ、親父、書いてんだ」ということになるんで。

 ご存じですか? ピカチュウ1個で3兆円ですよ。日本の鉄鋼業全体と稼ぎ高がおんなじぐらい。自動車工業で20兆でしょ。で、一番稼いだ7年ぐらい前の日本の漫画とアニメとゲームの3つの売り上げが、14兆7000億。それに対して国はなんにも援助を与えない。映画はいくら稼いでも2000億でしょ? 10兆円を超える世界ですよ。

 漫画とアニメとゲーム、全部違うメディアで、その3つの真ん中を占めているのがキャラクター。だから、その中心を教えるんです。

 人間は、神と悪魔というキャラクターを作ることで、自然現象に耐えてきたわけです。神様には感謝し、悪魔の怒りは鎮めなくちゃいけない。で、祭壇を設けて、そこから教会建築が生まれ、お供えものを入れる器からガラス工芸ができてきた。

 キャラクターが中心となって、世の中はすべて動いている。これが僕の『キャラクター原論』なんです。(敬称略)

※『週刊大衆』2012年1月30日号より

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