何度も耳にした“平成最後の――”というフレーズですが、天皇賞(春)で、いよいよ、本当に最後を迎えます。振り返ると、平成の時代が始まったのは、僕がデビューした3年目の1989年……この前年、スーパークリークに菊花賞を勝たせてもらって、「さぁ、行くぞ!」と、若さと勢いを武器に臨んだ年でした。オグリキャップ、スーパークリーク、イナリワン。平成の3強と呼ばれる3頭がしのぎを削った、競馬ブームの幕開けでした。

 この年、故障のため春競馬を全休したスーパークリークに乗れなくなった僕は、イナリワンとともに、天皇賞(春)、宝塚記念とG1を連勝。秋は帰ってきたスーパークリークとのコンビで、オグリキャップ、イナリワンと戦うことになるという、今、思い返しても胸がワクワクするようなレースの連続でした。

 3強が初めて顔をそろえたのは、第100回天皇賞です。1番人気に推されたのは、南井克巳さんに乗り代わりオールカマー、毎日王冠を連勝したオグリキャップ。京都大賞典で復活したスーパークリークと僕が2番人気。岡部幸雄さんとメジロアルダンが3番人気で、柴田政人さんとコンビを組んだイナリワンは4番人気です。世は、まさにバブル景気の真っ最中。徹夜組を含め、当日の東京競馬場のスタンドは、午前中から人、人、人で埋まり、すさまじいほどの熱気が渦巻いていました。

――120%の競馬ができました。これがレース後の僕のコメントです。オグリキャップは、イナリワンはいつ来るのか!? ゴールの瞬間まで、ドキドキしっぱなしだったあの感じは、今でも覚えています。

 平成最初の天皇賞を制覇。この勝利を皮切りに、春8度、秋6度、併せて14度の勝利を飾り、皆さんから、“平成の盾男”と呼んでいただけるほど、僕にとって天皇賞は最高に相性のいいレースでした。

■平成最後のG1は天皇賞(春)

 そして、4月28日、京都競馬場を舞台に行われる天皇賞(春)が、平成最後のG1レースとなります。体が2つあれば、乗りたいレースです。平成最初のセンバツを勝ち、平成最後のセンバツを優勝で締めた愛知・東邦高校のように、自分の手で平成の競馬に幕を下ろしたい――そんな気持ちもあります。

 でも、しかし、僕の平成最後の騎乗は海外……香港での競馬になりました。パートナーは、クイーンエリザベス2世が、ディアドラ。チェアマンズスプリントプライズが、ナックビーナスです。平成の幕開けとなった89年に、初めて海外に出かけ、アーリントン国際競馬場で初勝利を挙げた僕が、平成最後の競馬を海外で終え、令和の幕開けをジェニアルとともに挑むフランスのミュゲ賞で迎える――それもなんか、すごく武豊らしいかなと思っています。

 平成から令和へ――。ひとつの時代が終わり、また新しい時代の始まりです。

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