広瀬すず
広瀬すず

 連続テレビ小説なつぞら』(NHK)は、すでに放送7週目となっている。先週も平均視聴率はずっと21%越え(ビデオリサーチ調べ/関東地区)と非常に高く、放送開始1か月半で、すでにドラマは安定期に入った。週タイトルも「なつよ、今が決断のとき」となり、ついにヒロインのなつ(広瀬すず/20)が、アニメーターになることを決断。さらに注目度が高まりそうだ。ここでは5月11日の放送を振り返り、このドラマがなぜ人気になっているのかを考えてみたい。

 スキー大会で天陽(吉沢亮/25)のなつに対する想いを知った、柴田家の長男、照男(清原翔/26)。翌日、なつが出かけようとすると泰樹(草刈正雄/66)がこれを引き止め、なつと照男の結婚話を持ちかけるという事件が起こる。照男と実の兄妹のように育てられたなつは取り乱すが、照男はこれをなだめて天陽の家へ向かうように促した。しかし、天陽の家に行く途中、なつは吹雪に遭ってしまい……。

 先週は天陽と照男が抱えるなつへの想いが丹念に描かれ、キュンキュンする場面が多かった。もちろん、なつと天陽の恋模様もこのドラマのヒットに寄与しているが、実は「タテ軸と横軸」の絡め方の巧みさこそが、『なつぞら』ヒットの秘訣なのではないだろうか。

 これまでを振り返ってみると毎週のように、なつがアニメーターを目指すきっかけが散りばめられてきた。幼少期のなつはアニメ映画に目をキラキラさせていたし、高校生になってからは演劇部で表現する喜びを知った。そして兄を探しにやって来た東京で偶然アニメ制作会社を見学し、天陽とのデートではディズニー映画に魅せられた。今週は遭難から救ってくれた阿川(中原丈雄/67)が彫刻に向き合う姿を見て魂の表現を知る。

 このようになつの成長、つまりドラマの「タテ軸」が、いやらしくなく織り込まれているのが本作の見事なところだ。おかげで視聴者は泰樹VS剛男(藤木直人/46)や、兄の咲太郎(岡田将生/29)を探す上京といったドラマの「横軸」を楽しみながらも、ヒロインなつに感情移入することができるのだ。

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