向井理
向井理

わたし、定時で帰ります。』(TBS系)で、ドラマ自体の注目度と比例し、回を追うごとに跳ね上がっているのが種田晃太郎を演じる向井理(37)の好感度である。5月21日放送の第6話では、天才肌で仕事ができる彼が、顔を歪ませ弱音を吐露するシーンが話題になった。

 きっかけは、弟の愁 (桜田通/27)から「僕の気持ちを全然、分かっていない」と過呼吸になりながら言われ、部下の来栖泰斗(泉澤祐希/25)からも「種田さんには僕の気持ちなんて分からないですよ」とキレられるという、ダブルの拒否である。

 種田の、傷つかなそうでなんでも簡単にこなしそうというイメージ。これは最高の評価にして、とんでもなく残酷な“仲間はずれ”である。私たちとあなたは違うという決めつけとシャットアウト。そして常にハイレベルな結果を求められる。しかもそのことに「本当は違うんだよ」と本音をぶつける柔軟さが、種田にはない。

「あの人なんでもできるよね。私たちとはステージが違う」こう思われている人の孤独とプレッシャーは、想像以上に深いのだ。そして向井理自身も、この言葉を何度も言われてきたのではなかろうか。そんな彼が顔を歪め、元婚約者で唯一の理解者でもある結衣(吉高由里子/30)に「傷つく」と呟いたときの破壊力たるや。そして失言を謝罪する来栖への「まあ、いいよ……言われなきゃ分かんないし」の苦笑いでトドメだ。眠っていた母性本能が、一瞬にして爆発した視聴者も多かろう。

 しかし向井理がいい人に見えてくるほど、なぜか腹も立つ。「好きになってしまった。悔しい!」という感情が湧いてくるのだ。というのも、そもそもこの人は完璧すぎるのである。顔の小ささ、ルックス、背の高さ、脚の長さ、声の良さ。そして知的なオーラ。この「好きになったら思うツボだけどスルーできない」と思ってしまうほどのスキのなさこそ、向井の持ち味であり、種田を魅力的にしているポイントではないだろうか。

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