■青春の喪失感をちゃんと味わうことができた

 大人になり、アイドルのライブ現場にたくさん足を運んでは、励まされたり元気になったり、幸せな応援生活を送っています。

 去年、新宿ロフトでいくつかのグループが対バン形式で出演するイベントに行ったら、tipToe.さんも出演をしていました。「一緒に青春しませんか?」をコンセプトにして活動をしているこのグループの音楽が好きでよく聴いていたのですが、わたしは、ティップさんに関しては在宅(※自宅で音源を聴いたりするファン)だったのでライブを見るのは初めてでした。

 満員の新宿ロフト、ひとの隙間からちょっとでも見たいなぁと背伸びをしていたら、オープニングSEが流れメンバーが登場しました。チラチラと見える制服と爆音。家でひとりで聴いていた音楽を、必死で応援している人たちと一緒に聴くことは、走り出したくなるほど気持ちが高ぶることでした。

 そして、4月に公開された「茜」のMV。

「いつか君を好きだったことも
 懐かしくなる日がくるのかな
 君のこと忘れるぐらいなら、
 ずっと苦しいままでいいのにな」

 tipToe.さんは、メンバーがtipToe.でいられるのは3年間。学校と同じです。

 この曲を聴いていると、恋愛感情での好きな人ではなく、tipToe.さんのメンバーの顔が浮かびました。

 好きなアイドルにはずっとステージにいてほしい。

 永遠にいてほしいけれど、永遠にはいられない。

 現メンバー体制は、永遠ではない。

 3年が過ぎてあの子たちが去ってしまったら、こんなに好きなことも懐かしくなる日が来るのでしょうか。

 そのときわたしは、それなら悲しくてさびしいままでいいと思うのでしょうか。

 そんなことを考えていたら、「まるで青春だな」と思って、ちょっと笑ってちょっと泣きました。

 わたしは、tipToe.さんの曲とシステムのおかげで、自分が持つことができなかった青春の喪失感をちゃんと味わうことができたようです。

 体験をしていないぶんの青春をちゃんと始めて、そして終わらせることができた気がします。

愛せない日常と夜中のイヤホンで流れるアイドル

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