――目指すのは、30代、40代に続く、50代での日本ダービー制覇。ひそかに一発を狙っていた第86回日本ダービーは、2桁着順、10着に終わりました。とはいえ、スタートからゴールまで、自分の競馬をやり切ったメイショウテンゲンは立派のひと言。最高峰の舞台で、今の彼にできる最高のパフォーマンスを見せられたことは、間違いなく明日につながります。充実のひと夏を過ごし、成長した姿でターフに帰ってくる秋以降の競馬に期待してください。

 令和初の日本ダービーを制したのは、浜中俊騎手が手綱を取った12番人気のロジャーバローズでした。馬の状態。枠順。天候。馬場状態。レース展開。そして、運。すべてを味方につけての優勝は、競馬の神様から浜中騎手への贈り物。いいときも、悪いときも、変わらず努力を続けてきた成果です。胸を張って、仲間からかけられる、「よっ、ダービージョッキー!」という声を受け止め、心の中に湧き上がる歓びを噛み締めてください。

 そして、もう一人。今年のダービーで、「ナイスファイト!」と声をかけてあげたいのが、騎乗停止で乗れなくなった父・横山典弘騎手の代役として初めて、この大舞台に立った横山武史騎手です。

――いくらなんでも飛ばし過ぎだ。そんな声を挙げている人もいると思います。事実、前半1000メートル通過タイム57秒8は、ちょっと速すぎました。でも、です。コスモアンバーに騎乗し、何もできないまま終わってしまった(24頭中16着)、僕のダービー初挑戦と比べると、果敢に攻めた武史騎手の姿勢は、2段階も3段階も上。父としては絶対に褒めないと思いますが、ノリちゃんも内心では、「よくやった!」と思っているはずです。デビュー3年目で、日本ダービーを経験できたことは、武史騎手にとって大きな財産。これからも、たゆまず努力を続ければ、いつかきっと、父と肩を並べる騎手に成長するはずです。

 もちろん、僕も、ノリちゃんも、まだまだ、若いジョッキーに負けるわけにはいきません。来年の日本ダービーに向けて、新馬戦もスタートしています。幼さと、もろさ。自分自身の限界を知らない無鉄砲さと、大いなる可能性。幼稚園児の運動会のような新馬戦が始まるこの時期は、いつも、ワクワク、ドキドキが同居しています。

 それでも、あのスペシャルウィークとの出合いがあったように、ディープインパクトとの邂逅に心が震えたように、この時期にしか味わうことのできないうれしさがあります。縁があって巡り合い、縁があってコンビを組み、縁があって夢の舞台に立つことができる――それが競馬。すべては、縁です。でも、その縁を結べるかどうかは、その人次第。競馬の神様に背を向けられないよう、明日からも、やるべきことをしっかりやって、レースに臨みます。

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