今週は、映画監督で脚本家でもある安里麻里さんです。『呪怨 黒い少女』や『リアル鬼ごっこ』(シリーズ3~5)など、数々のホラーやアクション作品を手掛けられている気鋭の女流監督で、業界では、“女タランティーノ”と呼ばれています。そんな安里監督の新作映画が、この夏に公開されるんですが、その内容は……好きな女性のベッドの下に潜り込む男のお話『アンダー・ユア・ベッド』!
ゆま「今日は、よろしくお願いします。あのぉ、私、麻美というんですけど、安里監督とは、“あさみ”と“あさと”で名前が一文字違いなんです」
安里「そうなんですよね。だから私も初めてお会いするのに、親近感があります(笑)。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
ゆま「さっそくなんですけど、私は一足お先に映画『アンダー・ユア・ベッド』を拝見させていただきました」
安里「どうでした?」
ゆま「正直、最初は覗き男の恐怖を味わうのかと思ったら、切なくもホロッとさせられる内容で、最後は泣いちゃいましたよ」
安里「ありがとうございます。この映画を作るにあたって、なるべく主人公の三井直人に接近して撮りたいと思ったんです。お客さんが至近距離で、この男を観ているような感覚というか。カメラの距離も近いですし、息遣いまで近い。お客さんが主人公の目線になって。いくようにしたかった。“なぜ、この男は、こうなってしまうのか?”と」
ゆま「確かに息遣い以外にもペンで文字を書いているときの音なんかも、とても繊細に聞こえるんです」
安里「わあ、うれしい。そう思わせるのが、私の狙いでしたから!」
ゆま「あ~(笑)。監督の仕掛けた罠にまんまと引っかかってしまったんですね」
安里「ぜひ、音を聞いてもらいたいです。これは“音の映画”でもあるんで」
ゆま「なるほど。音といえば、主人公の三井直人を演じられている高良健吾さんの、声のモノローグがまたいいんです。この映画自体、モノローグで話が進むじゃないですか。あれがまた新鮮で、高良さんの声がとても心地いいんですよね」
安里「私がこだわったポイントにものすごく気づいてくれていて、うれしいです」
ゆま「主人公の気持ちにさせられるから、物語が進むにつれて、どんどん主人公がかわいそうに思えて、助けてあげたくなるんです」
安里「主人公は家でも学校でも、いるんだか、いないんだか存在を無視されて、扱われてきた人間。学生時代はクラスメイトに名前すら呼ばれたことがない……。とても悲しい話ですが、実は世の中には、こういう人がけっこういるんじゃないかと思うんです。かくいう私も小学生の頃は超ネクラで、いつも独りぼっちでしたから(笑)」
ゆま「きっと誰にでも、ああいう部分はあると思うんです。この映画では、主人公が大学生のとき、たまたま後ろの席にいた佐々木千尋に“三井くん”と呼ばれただけで感動して、好きになってしまう。たった一度、一緒にコーヒーを飲んだだけなのに有頂天になって、彼女のすべてが輝いて見えるんですよね」
安里「でも、実際、彼女は彼に興味があるわけでもなくて……悲しいですよね」
ゆま「はい。だから、この男を気持ち悪いとは思えないんですよね。決して悪い人じゃないし、自分の欲望もあるだろうけど、彼女のために何かをしてあげたい気持ちが強いんですよね。ただ、人とコミュニケーションを取るのが下手なだけなんだろうなって」