■引退後、結婚して…

 今回、取り上げる3組の共通点は、いずれも一度は引退し、その後、結婚をしていることだ。「南沙織にとってアイドルになることは想定外の出来事で、本人は勉強がしたかったんです」(酒井氏)

 上智大学に進み、78年に学業専念を理由に引退を発表。翌年、写真家の篠山紀信氏と結婚をすることになるが、それは公式な引退理由ではない。また、結婚後も大学に通っていた。ただし、引退直後、彼女は篠山氏とヨーロッパを旅している。芸能レポーターの石川敏男氏は当時、東京の箱崎にある「東京シティエアターミナル」を経由して彼女が渡欧するという情報を、独占でつかんでいた。「箱崎からバスで成田に向かう彼女の姿を見つけて、いろいろと質問したんですが、ずっと無言で、ひと言も答えてくれなかった」

 そうしたとき、普通の女性タレントは、何かポロッとしゃべるものだという。「彼女はメンタルが強かった。芸能界で成功するには、そうした部分が重要なんでしょう」(前同)

 芸能界向きの性格ながら、引退後は91年に『紅白』に一度だけ復帰した以外は表舞台に出ず、家庭人として過ごしている。「彼女は篠山さんの地位や収入に惹かれたのではなく、人間として尊敬していたから結婚した。芸能活動よりも、尊敬する相手と家庭を築くことに価値を感じた。だから、長続きしているんです。これは、百恵・友和の関係にも言えることです」(同)

 百恵は、引退直前に自叙伝『蒼い時』で、友和との恋について告白している。「この本にはゴーストライターが存在するものの、中身はガチ。そこには友和の考え方、人間性に強く惹かれたという旨が記されています。また17歳のとき、初めて結ばれた相手が友和であり、他の相手とは経験がないともあります」(前出の出版関係者)

 友和一筋の百恵にとって、今回の出版物の刊行は復帰への布石なのか。前出の芸能レポーターの城下氏は、これを否定する。「復帰はまったくないでしょう。百恵さんは意志が強い人で、引退したときから芸能界に戻るという選択肢はゼロでしたから」

 これには彼女の家庭環境が背景にあるようだ。「百恵さんは、いわゆる非嫡出子で、父親には本妻がいたんです」(出版関係者)

 そのため、母子ともども苦労が絶えなかった。「お母さんに尽くしてあげたいという思いが強かった。小さなアパートからスタートして、最終的に立派な家を建ててあげることができた。それで満足だったようです」(城下氏)

 そんな彼女が次に考えたのが引退、結婚だ。「父親のいない家に育ったこともあり、家庭生活に集中し、子どもを育て上げたいと願ったんです」(前同)

 百恵の引退劇は、アイドルの理想的な去り方として伝説化している。ただし、所属事務所のダメージは計り知れなかった。「ホリプロの売り上げは半減。グループ会社全体でも4分の1に落ち込んだといわれています」(同) それだけ大きな存在だったのである。

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