草刈正雄
草刈正雄

 8月10日、ウェブのトレンドワードに「なつぞら最終回」が上がった。放送はあと1か月半もあるというのに、最終回のような内容と演出が話題を呼び、広瀬すず(21)主演の連続テレビ小説なつぞら』(NHK)が注目されたのだ。ここではその放送を振り返り、その大胆演出について考えてみたい。

 なつ(広瀬すず)の結婚を喜ぶ富士子(松嶋菜々子/45)は、自身の料理レシピを書き残したノートをなつに渡す。その後、なつは坂場(中川大志/21)と一緒に天陽(吉沢亮/25)を訪ねたり、坂場の両親と会ったりと結婚までのひと時を過ごす。そしていよいよ迎えた、なつと夕見子(福地桃子/21)の合同結婚式の日、白無垢姿に着替えたなつは泰樹(草刈正雄/66)に会いに行き……。

 この『なつぞら』第114話は2組の華やかな結婚式でハッピーエンド。最後にはスピッツの『優しいあの子』とともに、スタッフロールが流れた。主題歌をエンディングに使うというのは、朝ドラ最終回の常套手段だけあって、SNSでは「まるで最終回のよう」「なつぞら最終回もどき、本当に感動!」というコメントが踊っていた。

 しかし、なにより感動的だったのは、なつと泰樹のやりとりだ。この日はなつの小さい頃を想起させるシーンがたくさんあったが、その感動の導火線を最後に爆発させてくれたのが、なつと泰樹が語り合うところだ。2人のやりとりに涙腺が崩壊した人も少なくないだろう。

「ありがとう」とこれまで育ててもらった感謝を口にするなつに、泰樹も「ありがとう」と返す。「わしもおまえに育ててもらった、たくさんたくさん夢をもらった。ありがとう」と涙を流し、震える泰樹。この2人の会話の中で、あえて回想シーンを用いなかったのも、見事な演出だった。視聴者はそれぞれ、幼いなつが泰樹に厳しく、そして優しく育てられていったドラマ第1週を思い出したはずだ。本当に見事な最終回、ではなく感動の神回だったといえる。

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