僕の人生において特別な存在だったディープインパクトが亡くなりました。まだ17歳……。体調が良くないと聞いていたので心配していましたが、訃報を聞いた瞬間は、寂しさと哀しみで何も言葉が出てきませんでした。その思いは、今、こうしてこの原稿を書いている時点でも続いていて……本当に残念です。
強くて、速くて、かっこいい。どんな距離でも、どんな条件でも、どんな状況になっても勝ち切る。
――こんな馬が本当にいたらいいのになぁ。彼は、そんな思いを体現して僕の前に現れたヒーローでした。
――14戦12勝。そのすべてでコンビを組めたことは、僕にとって誇りであり、彼と過ごしたときは最高に幸せな時間でした。
その中で、唯一、今もずっと心に引っかかっているのが、凱旋門賞で勝たせてあげられなかったことです。
――世界一強いのはディープだ。だから、勝ちたいし、勝たなければいけない。当時は、そう信じていたし、その気持ちは今も変わっていません。いつか……彼の最強の遺伝子を引き継いだ、最強の産駒と一緒に凱旋門賞に挑み、そして、勝ったぞ! 逝ってしまったディープに、その言葉を届けられたら、と思っています。その日が来るまで、ディープインパクトの主戦ジョッキーだったことに恥じない騎手として、これからも精進を続けます。
■G3北九州記念はファンタジストで
それでは今週の騎乗馬についてお話しましょう。週末18日は、小倉です。予定しているのは2歳新馬戦。キズナ産駒の牝馬、シャンドフルールとのコンビです。ディープインパクトからキズナへと受け継がれた最強馬の血が、さらにその仔、シャンドフルールへ。いったいどんな走りを見せてくれるのか!? 当日のことを考えると、今からワクワク、ドキドキが止まりません。
メインレースは、G3北九州記念。パートナーは、昨年のG3小倉2歳Sを制し、続くG2京王杯2歳Sを連勝したファンタジストです。皐月賞、NHKマイルカップで惨敗した彼にとっては、ここが復活への第一歩……負けられない戦いになります。
ディープにいい報告ができるように、この夏も全力で駆け抜けます。
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