■若い人に見てほしいと思いながら作っている

――『道』では、激動の昭和史をたどりながら、「戦争」というものを真正面から取り上げていますね。

『やすらぎの郷』を始める際には、倉本先生から「お年寄りが見やすい時間帯に、お年寄りが求めるドラマがない」という声を受けて“シルバータイム”と銘打っていました。

 でも、倉本先生もそうだと思うんですが、クリエイターって、お年寄りだけに届けようと思って作ってはいなくて、我々はこのドラマを、本当は若い人にも見てもらいたいと思いながら作っているんです。

 その気持ちは、本作『やすらぎの刻~道』では、さらに強まっていると思います。

――ちょうど、8月には、根来家の人々が、戦争によって引き起こされた悲劇に巻き込まれていくエピソードが続きました。

 数年前から、終戦特番などのドラマでは視聴率がとれなくなってきていて、戦争を描くドラマ自体が少なくなってきた。もちろん、ドキュメンタリーや報道番組など、いろんな形で語り継いでいくのでしょうが、我々はドラマの担い手として、それでいいのかという想いが強くあったんです。

 夏休み、お盆、終戦記念日のタイミングでこのエピソードを放送したのは、先生にも、我々にも「若い人たちに戦争のドラマを見て欲しい」という想いが、ものすごく強くあったからですね。

――確かに、『道』では若い方に人気のある方がキャスティングされていますね。

 風間俊介さんやKis-My-Ft2の宮田俊哉さん(30)を見たくて、というのがきっかけでも構いません。若いファンの方が番組を観てくれて、その上で「戦争ってこういうものだったんだ」っていうことを知ってもらえばと思います。

 もちろん、お昼のドラマなので、学校や仕事で見られない人が大半なのは百も承知なんですが、リアルタイムじゃなくても、録画でも配信でもいいので、若い人に観ていただけたらと思っています。

 実際に、SNSなどの反応を見ていると、夜の9時以降にもう一度波が来るんで、帰宅後に見ていただいている方が一定数いらっしゃるようで、若い人にも見ていただけているのかな、というのは、なんとなく肌で感じています。

――作中では、主人公の兄や従兄が徴兵から逃げようとします。そういうこともドラマで描かれることは少ないですね。

 戦争に行くのを拒否するというのは、パッと見では“逃げ”ですが、彼らが選んだ選択肢というのは、本当に“逃げ”なのか。もっと厳しい戦いに身を投じたのではないかというような思いはあり、役者さんともよく話し合いました。

 そういった、“逃げるヒーロー”というのは、あまり描かれてこなかったと思います。終戦を迎える時にラジオで玉音放送が流れても、天皇が何と言っているのか分からなくて、戦争が終わったことに気づかない、というシーンがあるんですが、そういう描き方も、最近のドラマではあまり描かれてこなかったんじゃないかと思います。

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