ドキュメンタリー映画監督の松江哲明氏が、アイドル映画を評論し……、というか、アイドル映画ってそもそもどういった作品のことを指すのか? という再定義を目指す連載。今回から前後編に分けて、乃木坂46のドキュメンタリー映画第2作目『いつのまにか、ここにいる Documentary of 乃木坂46』を語ります!
■監督の主観が出ている“異端”の作品
――まずはアイドルドキュメンタリーのつくり方として、本作をどう思われましたか?
作り方としては、正攻法ではなく異端ですよね。というのも、AKB48のドキュメンタリーっていうのは、基本的に作り手の主観を削る方向にあったと思うんですよ。
岩井俊二監督がプロデュースをした1作目で言えば、女性を美しく撮る岩井さん独特のカメラアイを基に、女性監督がAKB48の輪の中に入っていって、彼女たちの空気感とか世界観を伝えるという方法論で、作り手の主観は排除されていました。すごく攻めてる第2弾の高橋(栄樹)監督の作品も、やはり高橋監督が現場を演出していくというより、撮れた素材をより効果的に見せるという素材の構成演出っていう側面が強かったと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=0dcbVuEQF6M
https://www.youtube.com/watch?v=XXzp7tm4OUY
その後もAKBGのドキュメンタリー作品は多数ありますけど、今作は、作り手の顔をこんなに出すんだという驚きがありました。しかも男性じゃないですか。映画の冒頭で「私はアイドル知りません。正直、仕事断ろうと思った」とテロップが出ますが、アイドルドキュメンタリーの面白いところである「成り上がっていく過程」ではなく、もう完成された乃木坂46で何を撮ればいいんだという、監督の個人的な悩みから入るっていうのが面白かったです。
これは別作品の話ですが、そういう明確な監督の視点がわかる作品でいえば、ソフトでしか発表されなかった酒井麻衣監督の『Legend of AKB48 ~NEW CHAPTER~』は劇場公開がなかったのが残念なくらい面白かったです。
https://www.youtube.com/watch?v=j91Ida6YbZ4