■まるで「高校生が卒業の時に撮った記念の映画」

 あとは、そういう作り方が許されるぐらい乃木坂46っていうグループが強いんだなと思いました。作り手が顔を出したところで、世界観がブレないほどの団結力とグループの強さを感じました。もっと言うなら、これはこの映画の良さだと思うんですけど、高校生が卒業の時に撮った記念の映画に見える感じも特徴かと。

――つまり、どういうことでしょうか。

 高校生、大学生が卒業する時に感じるような切なさのような、そういう普遍的な話を描いているようにも見えてくるんです。アイドルという存在がすごく特別なキラキラしたものとして描いていないし、また、何かのメタファーとして日本の社会とどう対峙しているか……というのも、まったくない。だから、身もふたもない言い方をすれば、アイドルのドキュメンタリーっていうよりは、学校の仲良かった友達が卒業しちゃう仲間同士の映像を見ているかのような(笑)。

――なるほど。要はAKB48のドキュメンタリーっていうのは、期せずして時代性を描いたりしていたけど、そういったものがなかったと。

 そうそう。なんか部活っぽい印象を受けて、例えば山下(敦弘)くんの『リンダ リンダ リンダ』とか、京都アニメーションの映画のようだなって。

https://www.youtube.com/watch?v=E6XiqwTL32I

 だから、映画を見る限りは、メンバーはファンのために頑張っているというより、他のメンバーのために頑張ってるように見えてくる。百合モノのアニメを見てる感じというか、関係性を遠くから眺めて愛でるようなドキュメンタリーですよね。もしかしたら、そういう目線で乃木坂を見ているファンの人も多いのかもしれないですね。

――監督は引いたスタンスだけど、「この視点で見てますよ」っていうことだけはテロップで明確にしていると。

松江 そうそうそう。だから、どんどんテロップがポエジーになっていくっていう(笑)。あの、お兄さんのような目線は乃木坂の世界観だからこそ許される演出なんだなって思いましたね。彼女たちは詩情を喚起させるような存在なんだと思います

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