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 世間で“働き方改革”という言葉が叫ばれるようになって久しい。仕事と育児や介護の両立など、働き方が変わったことで、各企業が改革に取り組んでいるが、実はテレビの制作現場も同じだ。

 夏ドラマ『偽装不倫』(日本テレビ系)は、「時短撮影」が行われていたという。主要キャストのは3人の子どもがいて、仲間由紀恵も双子の母親。2人が時短収録を希望したところ、時短撮影が実現し、現場のスタッフからも好評だったようだ。

 これは見事な働き方改革だったが、2人の希望だけで実現したわけではないようだ。以前よりドラマの視聴率が落ちて制作費が限られるようになったこともあり、今は「撮影時間を延ばしてでも良い作品を作ろう」という雰囲気の現場は多くない。そもそも時短を受け入れる素地が、十分にあったのだ。

 また、慢性的な人手不足に悩むテレビの制作現場では、なんとかいいイメージを広めたいという気持ちもあっただろう。昔から撮影の仕事は、プライベートの事情などおかまいなしな“ブラック環境”というイメージがあるが、これを払拭したいという意図もあったようだ。

 働き方改革は民放だけの話ではない。2018年下半期の連続テレビ小説まんぷく』(NHK)は、主演の安藤サクラが「ママ」になりたてでヒロインに抜擢されたことが話題になった。それもあり、NHKは局内に託児所を設け、親子の時間をしっかり取れるよう尽力したそうだ。その証拠に『あさイチ』に安藤サクラが出演した際には、当時1歳だった愛娘が『まんぷく』撮影現場で、スタッフや出演者たちからあやされている様子が放送されていた。

 また、19年上半期の『なつぞら』では、報道陣に公開してきたクランクアップをクローズにし、後日に発表した。この日は収録終了が深夜となったので、早く帰らなければならないスタッフや関係者に気遣ったためのようだ。これまで朝ドラクランクアップの瞬間は各メディアでニュースになってきたが、話題性より、報道陣や対応するスタッフの負担軽減が優先されたわけだ。

 さらに朝ドラは20年4月スタートの窪田正孝主演『エール』から、放送が週5回に短縮されることが発表されている。これもスタッフの負担軽減を狙った、働き方改革の一環だ。視聴率で他を圧倒する朝ドラは制作体制に余裕があることもあり、実はどこよりも働き方改革が実現している、先進的なドラマ枠といえるかもしれない。

 また、NHKは、人気番組『チコちゃんに叱られる!』でも、CGチームの仕事を減らして夏休みが確保できるように、いつもはCGのチコちゃんがぬいぐるみで登場するコーナーを放送していた。パイプ椅子に座り岡村隆史と語り合う姿はシュールだったが、「働き方改革」の推進は確かにアピールされていた。

 国が推進していることから、今後も放送業界での働き方改革は進んでいくだろう。スタッフには余裕のある環境で、しっかりといい番組を作って、視聴者に届けてほしいものだ。

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