安部譲二
安部譲二

 作家の安部譲二(本名・直也)さんが9月2日、急性肺炎のため東京都内の自宅で死去した(享年82)。最期は妻・美智子さんと愛猫・ウニちゃんに看取られながら息を引き取った。『塀の中の懲りない面々』などで人気を博した安部さんは、本誌の連載コラム『ゼッタイ間尺にあわねえゾ!!  安部譲二の怒・怒・怒!』(97年4月〜15年12月末の約18年間)を執筆。その論調は、時に過激すぎて、「ここは削らせてください」と担当編集を少々困らせることもあった。だが、安部さんは、「俺は前科十四犯。怖いものなんてないよ」「褒めるほうが嫌われないし、楽だよ。でも、それじゃダメなんだ」と、そのスタンスを変えなかった。「忖度」なしの無頼派作家・安部氏が日本人に残した名言を、ここに紹介する。

 10月から消費税が10%に上がるが、奇しくも連載第1回の見出しは『政治屋にもの申す!! なぜ消費税を5%に上げなきゃいけないんだ』(97年4月)だった。〈今の日本は、真面目に働いて税金を払って国家を支えている僕たちにとって、腹の立つことばかりです〉と切り出すと、〈四月一日から消費税が五%になると聞いて、エイプリルフールだと思ったのですが、呆れたことに本当でした〉と皮肉り、〈政府は(中略)5%にしたことに味をしめ、7%、10%、そしてそれ以上をアップして行くことは目に見えています〉と、未来予知。

 そして、国民の血税を湯水のように使う政府、役人に対して、〈無能で出鱈目の役人と、国会議員の数は、少しも減りません。比例代表区なんて馬鹿な制度は、やめてしまえと国民のほとんどは思っているのです〉

 コラム全体を通して、政府、役人などの権力者に対しての厳しい姿勢は一貫。それは、日本の総理大臣に対しても同じだった。第566回(08年9月)では、政界引退を表明した小泉純一郎氏を、〈俺より五つ若い六十六歳の政治屋が、足元の明るいうちに逃げ出しただけ〉〈俺は「屋」と書いた。(中略)政治家というのは、国家と国民を自分のことより大事に思っている人のことだ〉と指摘。

 ちなみに、第573回(08年10月)では、麻生太郎首相に言及。〈踏襲をフシュウ、未曾有をミゾウユウ(中略)麻生太郎は、漢字の読み方を間違ったのではなく、意味を理解していないのだ〉とバッサリ。

 スポーツ好きの安部さんは、大のプロ野球ファンで、ソフトバンクがヤクルトを4勝1敗で下し、日本一に輝いた15年10月、第889回で、持論を炸裂。日本シリーズ開催日が、セ・パ勝者が決まったあと1週間も空くことに激怒。〈バカなコミッショナーは(中略)なぜすぐにやらずに一週間も置くんだ(中略)〉

 さらに、〈セ・リーグの選手は監督コーチを含めて、勝つためだけに野球をしている〉と酷評。〈プロ野球の存在理由は素人にはマネの出来ない鍛え上げた技術と旺盛な闘志で、感動的なプレーをやってみせること〉と論じている。 

 ちなみに、来年開催の東京五輪にも手厳しかった。国立競技場のデザインが白紙撤回となり、設計料が無駄になったことに対し、第880回(15年9月)で〈政治家や役人は、国民の払った大事な税金をいとも簡単にドブに捨てる〉と語り、第883回(15年10月)で〈安倍晋三の「汚染水は完全にコントロールされている」という大ウソから始まった東京オリンピック(後略)〉と斬って捨てた。

 第7回(97年5月)では、後の01年3月開始のスポーツ振興くじにダメ出し。〈博徒が開帳する非合法のテラ銭は、昔から5%の5分デラというのが常識(中略)サッカーくじはテラ銭を50%以上もふんだくるというのですから、これはほとんど泥棒です〉

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