■英語と日本語のちゃんぽんで話す理由は?

 お茶目なミスター伝説は枚挙にいとまがないが、選手時代はどうだったのか。V9時代のチームメイトである解説者の黒江透修氏が述懐する。

「僕は長嶋さんより3つ年下なんだけど、“長嶋さん”とは呼ばず、だいたい“チョーさん”とか“ミスター”って呼んでたね。あの頃は遠征に行くと旅館に泊まってたんだけど、だいたい、オレと土井(正三氏=故人)がミスターと同室になるんですよ。いろいろな話をしてもらったけど、面白いのが、当時の人気番組『スター千一夜』に出ることになったらというアドバイス。ミスターは、“テレビ番組では絶対におちゃらけるな”って。“本職の野球のときはおちゃらけてもいいけど、番組に呼ばれたときは、しっかり受け答えしろ”って言われたな」

 ミスターは旅館で寝るときも、枕元にバットを置いて寝ていたという。「夜中に人の気配がして起きたら、ミスターが真っ暗な部屋で、無言でバットを見つめてるの。すると、やおら立ち上がって、ビュンビュン素振りを始めるんですよ。。本当に練習熱心でしたね」(前同)

 ミスターが“練習の虫”だったことは有名で、ルーキー時代のキャンプで、水原茂監督に意見したくらいだという。「先輩記者に聞いた話ですが、ミスターが新人の頃の巨人のキャンプは、練習が昼頃に終わって、あとは麻雀に興じていたんだとか。 ただ、ミスターは立教大学時代に砂押(邦信)監督の猛練習に慣れていたから、水原さんに“こんな練習でいいんですか!”って食ってかかって。水原さんは “長嶋、出過ぎた真似するな”って怒ったようですけどね」(前出のデスク)

 ただ、ミスターは水原監督を慕い、その影響を強く受けているという。「ミスターがお洒落に英語と日本語のちゃんぽんで話すのは、水原さんの影響。水原さんはダンディで、英語をよく使う人でしたから」(前出の古参記者)

 “メークドラマ”“メークミラクル”“ミラクルアゲイン”……確かに、ミスターの会話では、英語がポンポン飛び出す。ただし、中には「?」がつくものも。「“THE”を“テヘ”と読んだことがあるのは有名な話です。メジャーリーグの視察に行った際に、“さすがお祭り好きのアメリカだ。球場の至る所にエキサイトって書いてあるよ”と言うから見たら、非常口の“EXIT”だったという話もあります」(前同)

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