JRAの平地G1制覇コンプリートに王手をかけるべく、タイセイビジョンをパートナーに挑んだ朝日杯FSは、またしても2着。栄冠には手が届きませんでした。

 先頭が引っ張る速いペース。後方4番手あたりの位置取り。GOを出すタイミングと、馬の反応。すべてが思い描いていた通りに進みましたが、最後の最後、脚が止まるだろうと思っていたサリオスは、そこからさらにグイッとひと伸び。2歳のこの時期に、あれだけの競馬ができるサリオスが強かった、としか言いようがありません。

――完敗? そうですね。現時点では勝ち馬を褒めるしかありません。マスコミや競馬ファンの皆さんが考えている通り、サリオスが来春のクラシック最有力候補に踊り出た、ということです。でも、です。この時期の2歳馬は、1か月間で別の馬に変身しているというのも、珍しくありません。各馬が、どういう成長カーブを描くのか。本当の戦いは、これからです。

■ウオッカやキングカメハメハも

 振り返ると、2019年は実に数多くの名馬が旅立ちました。3月には、スペシャルウィークと何度も激闘を演じた、高松宮記念の優勝馬、キングヘイロー。4月は、エリザベス女王杯などを勝った重賞9勝のヒシアマゾン。牝馬としては64年ぶり、史上3頭目のダービー馬に輝いたウオッカが亡くなったのも4月です。永遠のライバル、ダイワースカーレットをハナ差で制した08年天皇賞(秋)の走りは、今も僕の中にはっきりと残っています。彼女は、名牝というより、歴史に名を残した名馬中の名馬でした。

 夏……8月にはクロフネやタニノギムレットが成し得なかった、史上初となる、NHKマイルCと日本ダービーの変則二冠を達成したキングカメハメハが亡くなりました。彼は種牡馬となってからも大活躍。牝馬三冠を達成したアパパネ、僕にジャパンCをプレゼントしてくれたローズキングダムの他にも、ロードカナロアやドゥラメンテ、レイデオロ、ルーラーシップなど、芝・ダートを問わず活躍した産駒を多く輩出した、大種牡馬でした。マヤノトップガンも、ファンタジストの名前も忘れられません。

 中でも心が震えたのは、ともに時代を駆け抜けた最大の友・ディープインパクトの死です。日本の競馬史上、最強馬と呼べる馬は、何頭かいると思いますが、僕にとっては、ディープインパクトが最大で最強、最速の名馬でした。彼に掛ける言葉があるとすれば、あの当時も、今も変わらず、“ありがとう”です。

 来年も、再来年も、その先も、彼らに恥じない競馬を続けていくのが、残された僕らホースマンの使命です。

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