滝藤賢一インタビュー「『コタキ兄弟と四苦八苦』では何百回も…」の画像
滝藤賢一(撮影・弦巻勝)

 僕には三男一女、4人の子どもがいますが、子どもが増えるたびに転機となる作品に出会えた気がします。長男のときは、映画『踊る大捜査線 THE MOVIE3ヤツらを解放せよ!』。当時の僕は、まだそれほど知名度のある俳優ではありませんでしたから、まさか大人気シリーズのオーディションに受かるなんて思ってもみませんでした。

 それから三男のときには、映画『許されざる者』。当時、僕が最もご一緒したかった李相日監督の作品に出演することができましたし、末っ子の娘のときは、大ヒットしたドラマ『半沢直樹』に出演できた。よく“子どもは自分の食いぶちを持って生まれてくる”って言いますけど、本当にそうなのかもしれません。

 そんな子どもたちも今やヤンチャ盛り。一緒にいられる時間は楽しもうと思っているけど、なにしろ男の子が3人なので、もうむちゃくちゃ(笑)。ついつい叱ってしまいます。でも、4人の子どもたちに囲まれていることも、彼らと一緒にいられる時間が少ないほど仕事ができることも、すごく幸せだと感じますね。

 僕は20代のほとんどを、俳優養成所『無名塾』で過ごしました。主宰の仲代達矢さんからは「おまえは40歳まで我慢だ」と言われていて、そのつもりでいたんですけど、32歳のときに出演した映画『クライマーズ・ハイ』で道が拓けた。以来、幸せな俳優人生を送っています。

 これまで、映像作品における俳優は、各自がセリフを覚えて現場に行って、そこで初めて会った共演者とセッションする職業だと、ずっと思ってきました。ところが、今回出演するドラマ『コタキ兄弟と四苦八苦』はちょっと……いや、かなり違っていました。

 そもそもの始まりは3年ほど前、(俳優の)古舘寛治さんと久しぶりに会って「二人で一緒にやれたらいいね」と話したことでした。それからすぐに、以前からおつきあいがあるテレビ東京の濱谷晃一プロデューサーとお茶して、あれよあれよという間に話が進んでいったんです。

 今回の作品には、打ち合わせの段階から参加させてもらいました。あるとき、1話の準備稿があがってきて、古舘さんと二人で「本読み(台本の読み合わせ)をやろうか」ということになった。でも、台本を片手にセリフを読み始めると、古舘さんがいきなり「俺はそういう本読みがやりたいんじゃないんだよ!」って言うわけですよ。

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