伊藤万理華
※伊藤万理華/画像は本サイトの記事(https://taishu.jp/articles/-/56932)より抜粋

乃木坂46「個人PVという実験場」

第3回 伊藤万理華「乃木坂46個人PV」の世界を象徴する存在 2/4

■「統一テーマ」期の伊藤万理華作品

 2ndシングル『おいでシャンプー』から、乃木坂46の個人PVは「統一テーマ」を設ける時期に入る。12月24日更新分(/articles/-/70734)でもふれたこの統一テーマは、個人PV全体を包括する指針になった一方で、似通ったモチーフや映像表現が複数生まれやすくなる難しさも抱えていた。だからこそ、4thシングルの個人PVにおいて、「苦手克服」という統一テーマを高橋栄樹と生駒里奈のタッグが鮮やかに読み替えたことは、殊更に際立った。

 だが、この統一テーマ期にあって伊藤万理華が主演する個人PVは不思議と、その都度のテーマ設定を軽々と超えて、監督の作家性と彼女の個性とが強烈に響き合うような作品が続く。

 2ndシングル収録の個人PVで、伊藤の作品の演出を担当したのは山本真希。山本はのちに福島姓となり、翌年に個人PV屈指の名『まりっか’17』を監督する福島真希である。このとき個人PVの統一テーマとして与えられたのは「デート」だった。テーマの性質上、他メンバーの作品ではどうしてもデート相手の主観ショットやデート中の野外風景を用いた映像が多くなる中、山本らは場面設定をデート前日の夜にしたうえで、彼女の頭のなかだけで展開する夢うつつの世界を表現する。

(※伊藤万理華個人PV「デート前日の気持ち」予告編)

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