■大人数アイドルグループの意味~平成という不安な時代のなかで

 平成とは誰もが生きていくうえでの不安を抱え込んだ時代だった。始まってすぐにバブル崩壊があった平成は、経済の停滞が長く続いた。そのなかで格差の広がりなど経済面の不安は徐々に増していった。

 だが平成に生きる私たちにまとわりついた不安は、もっと漠然としたものでもあったように思う。特別貧しいわけでもなく、表面上自由がないわけでもない。だがにもかかわらず、いつの間にかまとわりついてくる将来が不透明という感覚。その漠然とした不安を平成の私たちは「生きづらさ」と呼んだ。

 その不安が深まるきっかけはあった。バブル崩壊、そして二度に及ぶ大震災。地下鉄サリン事件もあった。そうしたなかで私たちは、自分たちの拠って立つ日常が実は想像以上に脆いものであることを実感するようになっていった。それと軌を一にするように、家庭、地域、学校、企業といった社会をかたちづくる基本的な場にも次第に綻びが目立つようになった。

 AKB48のブレークをきっかけに2000年代後半から始まったグループアイドル時代は、そんな平成という時代に対するアイドルの側からの応答だったように、いまになって思える。

 そこでは同じグループでも、大人数であることに相応の意味がある。大人数のアイドルグループは、いま述べたような綻びを見せ始めたコミュニティの代わりとなるべきものだったからである。そしてファンもアイドルも、そこに居場所を求めた。

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