内藤剛志『捜査一課長』ベタなテレ朝ドラマが、今こそ必要なワケの画像
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 自宅待機が増える中、エンターテインメントのありがたさをひしひしと感じている。ニュースはどこもコロナ一色。大切な情報だと分かってはいるが、怖い。心が疲弊する。

 こんなときに必要なのは、気晴らしになる明るいドラマだ。しかも挑戦的なものではなく、おなじみの展開にホッとするもの。春ドラマで、ハッピーかつロマンティックに振り切った『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)が大ヒットしたのは、そんな背景も要因だったと思う。

 4月からスタートするドラマでは、9日から放送開始する『警視庁・捜査一課長2020』(テレビ朝日系)に期待したい。視聴者に安心を約束してくれるのは、前作やスペシャルでも証明済みだ。

 そもそもテレビ朝日は型を作るのがうまい。これまでも『はぐれ刑事純情派』『ドクターX~外科医・大門未知子~』など、チームワークや予定調和を上手に活かしたドラマを多く送り出してきた。『捜査一課長』シリーズの面白さはその最たるもので、「刑事ドラマのお約束を寄せ集めた美」にある。

 90年代後半『踊る大捜査線』(フジテレビ系)、『相棒』(テレビ朝日系)をきっかけに、社会情勢や警察階級、内部事情と闇を盛り込むなど、リアル志向が進んだ昨今。『捜査一課長』シリーズはそこからわざと逆に泳ぐことを選んだ、“メダカ流”の刑事ドラマなのだ。

 吹き出してしまうようなニックネーム呼びの採用。また、金田明夫(65)演じる見つけのヤマさんが捜査の重要なカギとなる捜索物をさっさと見つけるなど、プロセスをアッサリはしょるのも、すがすがしい。面倒な指令が出たら、陽月華(39)演じるドMの捜査一課管理官・板木望子が恍惚の表情を浮かべ、展開をポジティブに変えてくれる。上司を演じる本田博太郎(69)がユーモラスで全面的な味方なのもいい。

 内藤剛志(64)演じる捜査一課長の大岩は主役であり、同時にこのドラマの「型」そのもの。捜査会議の「必ず、ホシをあげる!」のひと言で、捜査員だけでなく、視聴者までも一体化してくれるのである。今はどんな過激な展開のドラマも、現実の新型コロナウイルスという恐怖に負ける。社会的な問題や、暗い事件と向き合うドラマは、それがいかに良質な内容でも、今の見る側にそれを楽しみ考える余裕があるとはいえない。

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