白石麻衣『パスポート』女性にも支持され「着衣で最も売れたアイドル写真集」となった意味の画像
※画像は『白石麻衣写真集 パスポート』(講談社)より

アイドルの肖像 —— 写真集から考える

第3回 白石麻衣『パスポート』前編

■これはアイドル写真集なのか?

 予定通りであれば、白石麻衣の卒業が近づいている。絶対的センターは27歳になっていた。いや、年齢は問題ではない。むしろひとつのキャリアとしてアイドル・グループの立ち上げからここまでの成長を8年間も支えてきた。その事実にこそ目を向けるべきであろう。彼女の功績は実に大きい。

 音楽の専門学校に通っていたが、ひとりセンターを務めた楽曲は少ない。25thシングル『しあわせの保護色』を最後にソロでの歌手活動はもうしないのではないか、とも言われている。それよりも最近ではモデル業での活躍がめざましい。『Ray』の専属モデルを5年間務めた。この雑誌を卒業した後も勢いは加速し数々の雑誌の表紙を飾り続けている。

 また、イメージ・キャラクターに歴代、蛯原友里水原希子らが起用されてきた資生堂のMAQuillAGE(マキアージュ)のCMにも出演。これが彼女の印象に「美」を決定づけた。

 昨年11月、『パスポート』は、「写真集マーケットを活性化させた」として、第1回野間出版文化賞の特別賞を受賞した。その後、卒業発表後に特別仕様の表紙で刷られた31刷で50万部を記録したことを受け、Yahoo! ニュースでは20代女性の声を拾い、白石麻衣が若い女性たちの「憧れ」の存在であることが強調された。女性に支持されたことが『パスポート』の発行部数を50万部という桁違いの数字まで引き上げた要因であることは間違いなさそうだ。

 授賞式で白石麻衣はこんなことを語っている。「女性目線でも楽しんでもらえるものになったらいいなという私の意見も取り入れていただき、衣装やロケ地の選び方など一緒に考えて、私の本当に満足いく作品になりました」と。

 そして「この本をキッカケに様々な現場で男女問わず本当にたくさんの方から声をかけていただくことが増えました」と。これを受けてスポニチが「男女問わず支持される新しい写真集の形を提示した」と言い表していたが、まさにその通りであろう。

「新しい写真集」として女性のニーズも色濃く写した『パスポート』は、女性が女性の写真集を買うという流れを生み出した。これに田中みな実のファースト写真集『Sincerely yours...』(宝島社)の60万部ヒットが加わり、「新しい写真集の形」はすでに定着したといえる。もちろん、フリーアナウンサーである田中みな実と、アイドル・グループ乃木坂46のメンバーである白石麻衣とは写真集制作の背景が異なりすぎているのだが、その違いはおいおいみていくとして先に進むとしよう。

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