■コロナを生き残るということは、コロナ後を生きること
今、弥益は自宅に創ったトレーニング・ルームでウェイトトレを行い、早朝に夫人を伴って公園へ行くと、互いにミットを持ち合っているそうだ。
「彼女は全く格闘技経験なんてないのに、意外とミットを持つのが上手くて。体が鈍っているのもありますけど、息が上がるぐらい力いっぱい打ち込んでいます」──そう言った弥益は、今回の電話取材で初めて笑い声を挙げた。
弥益はわきまえている。このような時代だからこそ、思い切った行動をとる人間がいることを理解したうえで、慎重な姿勢を貫く。
「僕は短距離を走っているわけじゃない。長距離を長く楽しんで走りたい。そういう格闘家人生にしようと、社会人になった時に決めたので。だから今は我慢の時。格闘技が長く皆に愛される環境を失わないためにも、今を見過ぎない。これからも格闘技の練習を、胸を張ってできるように、今は社会に対して誠実でいたいです」
コロナを生き残るということは、コロナ後を生きることに通じている。その真理を弥益はしっかりと理解できている。
(取材・文=高島学)
弥益ドミネーター聡志(やます ドミネーター さとし)
1990年茨城県生まれ。総合格闘家。team SOS所属。大学在学中にMMAの練習をスタートさせ、アマチュア大会を経てプロデビュー。DEEPを主戦場に勝ちを重ね、2018年10月、芦田崇広に勝利し、第9代DEEPフェザー級現王者に。MMA戦績15戦11勝4敗(2020年5月現在)。
Twitter:@ mma_pierrot Instagram:mma_pierrot
高島 学(たかしま まなぶ)
1967年9月28日生まれ。兵庫県神戸市出身。UFCを始め、海外で行われているMMAイベント及び、国内のケージ使用MMA大会、国内外の柔術&がグラップリング大会の情報、試合レポート、選手や関係者のインタビュー等を配信する専門サイト『MMAPLANET』を運営するとともに、『FIGHT&LIFE』『GONG格闘技』の専門誌で執筆活動を続ける。
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