中畑清(左)と福田正博
中畑清(左)と福田正博

 伝説は「伝説」を知る――日本が誇るスーパースター2人の秘話を、前号に続いてクロストークで語ってもらう!

 取材当日、中畑清氏にうれしい報告があった。

中畑「今朝、一般病棟に移った梨田から電話がかかってきたんだ。“苦しかったけれど、頑張ったよ”と。“自力で飯を食えるようになった”とも言っていた。今一番明るいニュースだよ!」

 新型コロナウイルスに感染し、集中治療室で治療を受けていた梨田昌孝氏(66)とは同学年の中畑氏。容態を、ずっと気にかけていたという。

中畑「やっぱりプロ選手として鍛えてきた“心・技・体”で病に打ち克ってくれたんだね。俺が、感激で泣きそうになりながら“よく頑張ったな”と声をかけたら、梨田も“ありがとう……”って涙声になっていたよ。そして“コロナが終息したら全快祝いをしよう!”と約束したんだ」

 一方、サッカー界でも、日本サッカー協会会長の田嶋幸三氏(62)が新型コロナに感染したものの、無事に退院。闘病の様子を発表している。そんな野球界、サッカー界のOBたちの「頑張り」が注目を集める中、中畑氏と福田正博氏に、スポーツ界と日本列島を明るく照らす“レジェンド”たちとのエピソードを聞いた。

中畑「やっぱり何はさておき、長嶋茂雄さん。ミスターとのエピソードが最初だな。“長嶋ファースト”で。いや、“サード長嶋、ファースト王”か(笑)。とにかく、2004年に脳梗塞で倒れられて、日本中が心配したけど、リハビリぶりがすごいんだよ。ふつう“歩けるように”くらいの目標を持つところを、長嶋さんは“走りたい!”だからね。みんなの想像を超えた目標設定なんだよ」

 常識外こそが“ミスターの常識”。02年、長嶋氏がアテネ五輪代表監督となり、組閣が報道され始めた頃、中畑氏に電話があった。

中畑「長嶋さんが“キヨシ、ちょっと電話じゃアレだから、人目につかない、いい場所があるから、お茶でも飲みながら話そうか”とおっしゃる。俺は直感で“コーチ要請だな”と心した。マスコミにバレちゃいけないから、慎重に指定された場所に行ってみると、なんとスポーツジムのラウンジでさ、もう、いっぱいギャラリーが来てるの(笑)。それで、一番目立つところに長嶋さんがいるのよ。もう、おかしすぎてツッコめないよね(笑)」

 一方、サッカー界最大のスーパースターといえば、今も現役を続ける“キング・カズ”こと三浦知良選手(53)。福田氏とは同学年で、同じフォワードとして鎬を削った存在だ。

福田「現役時代、カズとは何かと比較されましたし、ピッチの外では、ほとんど会話しませんでした。でも、日本代表チームでは“戦友”でしたね。そんなカズがまだ現役を続けていて、今では僕は、彼のグアムでの自主トレーニングの取材をしている。あるとき“サッカー以外でやりたいことはないの?”と聞くと、彼は“選手以外に興味はない”とキッパリ言うんです。年をとれば体が言うことを聞かなくなるし、毎試合出られなくなれば、コンディショニング維持も難しい。それを続けているカズはすごいですよ」

 キャリアの長い選手は、“ベテラン”にカテゴライズされ、「引退はいつか」と囁やかれるのが常だ。

福田「でも、カズは少年のように瞳がキラキラ輝いていて、痛々しさがまったくないでしょ。そのうえ、あの練習量で同情される余地はない。キャリアも年齢も重ねているけれど、“古い”のではなく、今や“アンティーク”の域なんです」

 三浦選手同様、現日本代表監督の森保一氏(51)も、サッカー界をともに盛り上げてきた“戦友”だ。

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