女子フライ級王者のRENAは女子のエースであり、RIZINにも参戦
女子フライ級王者のRENAは女子のエースであり、RIZINにも参戦

バナー題字・イラスト/寺田克也

 

シュートボクシングは、パンチ、キックに加え、投げ技や立った状態での関節技が認められた立ち技総合格闘技。1985年に創設され、今年で35周年を迎える、プロ格闘技団体最長の歴史を誇る老舗です。そんな老舗団体はいかに新型コロナウイルスと向き合ったのか。シュートボクシング協会統轄本部長の森谷吉博氏に聞きました。そして、女子フライ級王者RENA選手からもコメントをいただきました。

 新型コロナウイルスの感染拡大という、かつて誰も経験したことのなかった状況で、格闘技界も大きな岐路に立たされた。何しろプロ格闘技にとって最大の柱である「興行」が打てないのである。不特定多数の人間を密閉した室内に集める……これまで当たり前に行われてきたことが、急に不可能になった。人が集まればウイルスが蔓延して多くの人が感染する、いわゆる「クラスター」が発生しかねないからだ。国内でも感染の拡大が徐々に本格化し、多くの団体が大会の開催可否を巡って慎重な態度を見せ始めていた中で、シュートボクシング(以下、SB)が「開催中止」を打ち出したのはかなり早い段階だった。

 政府がイベント等の自粛要請を初めて打ち出したのが2月26日。その当日にPerfumeの東京ドーム公演が中止になり、話題となった。だがこの時点では開催可否の基準などがはっきり示されていなかったため、エンターテインメント全体で対応は分かれた。その中でSBは、要請の翌日である27日には3・1浅草大会(プロ・アマとも)の中止を発表した。翌週3月4日には、3・21大阪大会の5月上旬への延期もアナウンスしている(その後、3月27日に中止と決定)。その後、3月24日には4・22後楽園と5・1浅草(プロ・アマ)、そして5月11日には6・7後楽園と、合わせて5大会の中止を発表。また4月11日には5・31名古屋が11・23に延期されている。

 こうした「一手先」の中止発表は、どのようにして決定に至ったのだろうか。シュートボクシング協会統轄本部長の森谷吉博氏によれば、やはりかなり早い段階で“覚悟”を決めていたのだという。

「緒形(健一・興行を運営する株式会社シーザーインターナショナル代表。SBを代表する選手でもあった)が、当初から『イベントを再開できるのはヘタすると9月ぐらいになるかも』という予測を立てていました。スポンサーやコミッションなど、政府関連ともつながりのある方々のお話をうかがった上で、『これは長引くぞ』と。なので4月大会はまず無理として、4月中に騒動が終息しなければ早くても9月ぐらいまでイベント開催は難しいだろうと話していました。幸いスポンサーさんにもご理解のある方が多く、『どうしてやらないんだ?』というよりも『今は無理にやるよりリスクヘッジを考えたほうがいいのでは?』と気を使ってくださいました」

 安全と感染拡大防止を優先すれば、中止が一番であることは間違いない。だがそれは、興行会社としての収入が絶たれることも意味する。そのリスクについてはどう考えたのだろうか。

「もちろん会社はもとよりジムも含めて収入がなくなるのにランニングコストはかかるわけで、マイナスしか生まないこの状況をどうしようかというのはありましたが、それよりも観客の皆さんやジム会員さんの安全を第一に感染拡大を防止して、終息を待とうという協会の方針を早めに決めて、緒形が中心となってそのためのお金のやりくりをどうするかについて先回りして準備に努めました」

 早い段階で基本方針を固めたことが、そのためのリスクを乗り越える対策の時間につながった。やはり先手先手の方策が功を奏したのだ。しかし、そのために試合の機会がなくなった選手たちはどのような反応だったのだろうか。

「3月の大阪大会や4月の後楽園ホール大会ではタイトルマッチが決まっていたりしたので、選手たちはやはり大きなショックを受けていましたね。今ウチのエースの海人にしても、2月の試合で悔しい思いをしたままだから、試合をしたくてしょうがないはずですし。加盟ジムには『選手がショックを受けると思うので、モチベーションを保てるように各ジムでケアをお願いします』というメッセージを各代表に送信しました。こんな状況なので、ある程度しょうがないと覚悟はしていたでしょうが、どうしても練習に身が入らないのは間違いないですよね。選手たちにもできる限り直接連絡を取って、『必ずイベントは再開するから頑張ろうな』と声をかけるようにしています」

海人(右)。現在、日本スーパーライト級王者で、S-cup2018では世界王者に
海人(右)。現在、日本スーパーライト級王者で、S-cup2018では世界王者に

 その一方で、「無観客試合」の開催は考えていないという。

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