■ダブル主演はうれしい経済効果も

 演出面でも、明らかにダブル主演を意識している。『エール』は徹底して、裕一と音を対等に描く。2人の子ども時代や家族関係を丁寧に描き、裕一=福島、音=愛知という地元感も強調。裕一だけじゃなく、音も主役であることを印象づけてきた。これが2つめのメリットを生む。それは、物語の舞台を増やせるということだ。

 朝ドラは「ヒロインの地元」が注目される。たとえば来年春スタートする、清原果耶(18)主演の『おかえりモネ』の舞台は宮城県気仙沼市だが、早くも地元では盛り上がっている。地方にとって、朝ドラの舞台に選ばれることは、もうお祭り騒ぎ。関連グッズやイベントなど、朝ドラをきっかけに観光業が盛り上がるからだ。今回の『エール』のように一度で複数のエリアを舞台にできれば、ドラマの注目度を上げつつ、さらなる地域振興にも貢献できる。残念ながら今作はコロナ禍で観光客が押し寄せるということにはならないが、これは今まで朝ドラを全国展開し成功を収めてきたNHKの、新たな手法となるだろう。

 2か月『エール』を見て、こんな朝ドラこれまでなかったと感じると同時に、家族に仕事に愛情まで描く朝ドラらしい作品だとも思える。ダブル主演というシステムは、これからの朝ドラトレンドになる可能性は大だ!(朝ドラ批評家・半澤則吉)

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