(左)ぱんちゃん璃奈 (右)鈴木秀明
(左)ぱんちゃん璃奈 (右)鈴木秀明

バナー題字・イラスト/寺田克也

 

東京・押上のムエタイ&キックボクシング「STRUGGLE」(ストラッグル)。(前編)に続き、代表の鈴木秀明に非常事態宣言が解除を受けて再稼働し始めたいまのジムの様子をうかがうとともに、所属選手のぱんちゃん璃奈にこの非常事態をいかに過ごしていたかを聞いた。

※前編はこちらから

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、鈴木秀明が代表を務める東京・押上のキックボクシングジム『STRUGGLE』は一時閉鎖を余儀なくされた。

 大会も中止・延期が相次いだが、試合が決まれば選手は調整しなければならない。「マッチメーク決定→すぐ試合」などという芸当ができるわけもない。試合までには、少なくとも一カ月以上の調整期間が必要だろう。

 鈴木は東京都に「僕らは身体を使う仕事。全く練習していなかったら、復活する時に大変。すぐ身体は元に戻らない」と窮状を訴えた。

 都は粋な返答を出した。

「指導スタッフ(プロ選手)に限っては自主練習しても構いません。ただし、ふたりでやるのはダメ」

 それから鈴木はただちに環境を整えた。ジムのカギを開け、プロが入れ代わり立ち代わり練習できるようにしたのだ。

「ひとり1時間くらいですかね。僕は口も出せないので、選手は体力が落ちない程度にサンドバックを打つだけ」

 無理はさせたくなかった。その確固たる理由もあった。鈴木は現役時代に肺炎を患った経験を持っていたのだ。

「僕の場合、試合前からずっと調子が悪くて微熱が1カ月くらい続いていた。おかしいと思って病院に行ったら問題なしという診断だった。練習では全然動けないし、試合でもインターバルの時に鼻水が切れない。その数日後には熱が40何度まで上がったので、病院に行ったら肺炎と診断され、1カ月の入院になりました」

 質は異なるとはいえ、身を以て重症肺炎を経験しているだけに、鈴木はコロナに対して人一倍敏感だった。

「今回もひとり感染者がいるだけで、広がってしまうという話を聞きました。だからなるべく気をつけたいけど、いまのところ医療崩壊はしていない。仮に感染者が出たとしても、十分な治療を受けられる可能性は高くなってきたと思います」

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