うれしい出来事が二つもありました。一つめは、区切りとなるJRA通算4200勝の達成です。僕自身は、通過点という気持ちが強く、レース前はそれほど意識していませんでしたが、記録達成後、ジョッキー仲間に祝福され、ジワジワと喜びが込み上げてきた感じです。プラカードを持ってくれたC・ルメール騎手の、「(ユタカさん)勝ち過ぎ」というイジリには、「あなたがいなければ、もっと早く勝てた」とお返し。みんなの笑顔に囲まれながらのセレモニーは、いつもとはちょっと違った意味で、忘れられないものになりそうです。
1987年3月1日のデビュー戦、阪神4Rアグネスディクターから数えて2万2487戦目での達成。これまで僕とコンビを組んでくれたすべての馬と、関係者の皆さん、応援し続けてくれるファン、そして、こんなときでも、一緒に喜んでくれる仲間に感謝の気持ちでいっぱいです。
6000勝は、さすがに遠過ぎてピンときませんが、まずは、5000勝を目指して、さらに精進を重ねていきますので、引き続き、オジサン騎手を応援していただけるとうれしいです。
二つめは、交流重賞Jpn3クラスターCをマテラスカイでレコード勝ちしたことです。レース前は、相手もそろっているし、100 %の競馬をしないと勝てないだろうなと思っていましたが、本番では、ほぼ思い描いていた通りのレース運びをすることができました。後方につけて、最後の直線にかけようと思っていたのに、いいスタートを切ったおかげで逃げる展開になってしまうこともあるし、その反対に、逃げようと思っていたのに出遅れて後方からの競馬になることもあります。競馬が面白いのは、難しいと思うのは、そんな展開になっても勝ってしまうことがあるからです。どんな勝ち方でも、勝ちは勝ち、うれしさは一緒ですが、思い描いた通りに勝ったときの気持ちよさは、やっぱり格別のものがあります。
しかも、この日の盛岡競馬場は、無観客ではなく、スタンドには、お客さんがたくさん入っていたんです。拍手と“おめでとう”のコール。鳴り止まない歓声と、“ありがとう”のシャワー……改めて、競馬はファンあってのものだということを実感しました。中央競馬で、お客さんの前でレースができるようになるには、もう少し時間がかかりそうですが、その間も、僕ら騎手はすべてのレースで全力を尽くします。
今週末、9月5日に行われるG3札幌2歳Sも、その一つ。パートナーのピンクカメハメハは、お母さんが現在27歳とは思えないほど、元気ハツラツ。ピンクカメハメハ自身は、競馬に対してもすごく前向きで、操縦性の高さに加え、一瞬で後続を突き放す脚と、最後まで走り切ろうとする一生懸命さは、来年に向けて大きな武器になります。期待していてください。
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