■犬の治療費14万円が!
正木氏は、大きく揉めた過去の事例についても紹介してくれた。
「2012年8月3日に東京地裁が下した判決です。原告が元配偶者である被告に対し、この裁判の対象になった建物を不法占有していると主張して、建物の明渡しと賃料相当損害金の支払いを求めました。すると、被告が原告に対して、双方で“離婚にあたっての生活の条件”として合意したとして、建物についての使用借権(物を無償で使わしてもらう権利)の確認、生活費および慰謝料の支払いを求めました。
判決では、“離婚にあたっての生活の条件”とした合意を離婚後2年間の取り決めと解釈した上でこの合意に基づき、原告の離婚後2年分の生活費などの支払い義務を認め、離婚後2年経過した時点からの原告から被告への賃料相当損害金の請求を容認しました。
そして、合意内容の中には、“原告は、ペットにかかる特別な費用を支払う”の項目も含まれており、合意に基づき、当初被告が支払った犬の治療費約14万円は、原告が負担すべきであるとされました。ペットに関して、予め合意の上、書面に明記しておくことの重要性がわかる事例です」
簡単にまとめると、ペットは財産分与の対象になるが、ペットを引き取らなかった方が特に対価を受け取ることはない。また、結婚前からどちらか飼っていた場合は元々いた方の財産になる。所有者を決めるときはペットの視点から適切な所有者を定めるのが望ましい。面会交流は合意があればできる。
ペットだからといって、軽視することなく、しっかりと話し合いをし、取り決めをすることが大事なようだ。