巨人の“メークドラマ”も!プロ野球「伝説の大逆転優勝」舞台裏の画像
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 これぞ、まさに筋書きのないドラマ。最後まで諦めない男たちの“驚異の戦い”を、証言とともに振り返る!

 いよいよ後半戦に突入したプロ野球。混戦模様のパ・リーグに対し、セ・リーグは巨人が独走態勢。原辰徳監督のV2も秒読み段階に入っている。「今季、セ・リーグではクライマックスシリーズ(CS)が行われませんから、巨人の日本シリーズ進出は濃厚。ただ、原監督は、けっして手綱を緩める気配がない。これは、かつての経験があるからかもしれません」(スポーツライター)

 かつての経験――原第二次政権下の2008年、巨人は阪神が7月にマジックを点灯させる中、最大13ゲーム差を逆転して優勝。いわゆる“メークレジェンド”を成し遂げているのだ。「原監督は、ミスターも一目置くほどの勝負師。勝負は最後まで何があるか分からないし、かつての巨人のようなチームが出てこないとも限らない。だから油断せず、勝ちに徹しているんでしょう」(前同)

 そんな“メークレジェンド”以外にも、10ゲーム以上の差を逆転し、優勝をもぎ取ったチームは存在している。その筆頭とも言えるのが、1996年。長嶋茂雄監督率いる巨人の“メークドラマ”だ。この年の巨人は開幕から低迷。7月6日の時点で、首位の広島に11.5差をつけられた。しかし、だ。「7月16日に、松井秀喜が20号を打つと、ミスターは“松井が40本打てば、メークドラマが実現できる”と宣言。周囲の終戦ムードに反して、指揮官だけは、けっして諦めていなかったようです」(球団関係者)

 さらには、こんな逸話もある。ドン底の6月末、長嶋監督が知人たちと食事をしたときのことだ。「巨人の優勝が話題になり、出席者みんなが“もう無理でしょう”と話す中、ただ一人だけ“優勝できる”と答えたのが長嶋監督だったそうです」(前同)

 監督の言葉に鼓舞されたかのように、チームは調子を上げ、なんと約ひと月後の8月20日時点で首位に。その後、広島、中日との優勝争いを制し、見事に“メークドラマ”を完結させる。「オフに、6月と同じメンバーで食事会が開かれたんですが、ミスターは“どうだ!”とばかり、ご満悦だったとか(笑)」(同)

 そんな巨人の二大逆転優勝をも超える日本記録――それは最大14.5差を跳ね返した63年の西鉄だ。6月にライバル・南海から14.5ゲームを離され、7月時点で5位。しかし、この直後から西鉄はジワジワと順位を上げていく。「10月に南海が全日程を終了した時点で、ゲーム差は1に。西鉄は4試合を残し、1敗でもすれば南海の優勝が決まるという、すさまじい状況になります」(当時を知る元記者)

 ここで西鉄は、なんと4連勝。優勝をもぎ取ることに成功したのだ。「10月の成績は13勝3敗。そのうち、エースの稲尾和久が先発とリリーフ合わせて8試合に登板しています。まさに、稲尾ありきの優勝でした」(前同)

 実は、この5年前の58年にも、西鉄は10ゲーム差を逆転優勝している。この年も、稲尾がフル回転の活躍を見せた。「稲尾は後半戦だけで、48試合中31試合に登板。17勝1敗と驚異的な働きで、当然のようにMVPを獲得しています」(同)

 稲尾は現役時、756試合に登板。鉄腕と呼ばれた稲尾だが、投手生命は14年と短かった。「西鉄の野武士軍団を作り上げた三原脩監督は後年、持病の糖尿病が悪化し、寝たきりに。稲尾が見舞いに来た際には、手を取って“酷使して悪かった。でも、おまえの力が必要だったんだ”と、涙を流したそうです」(同)

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