コロナ禍でも行ける「海外」とは? 自粛生活にうんざりした筋金入りのバックパッカーが、家を飛び出して出かけた先は意外な場所だった!の画像
ごつごつした岩礁が入り組み複雑な地形になっている

神奈川県最南端の島へ 

「どうしても海外に行きたい!」

 もう自粛生活はうんざりなのである。僕はパスポートを取得した四半世紀前からずっと、年に3、4回は海外を旅してきた。それは取材だったり遊びだったりさまざまだが、ともかく旅こそが日常だったのだ。それが数えてみれば、もう半年以上も日本に幽閉されているではないか。ストレスを溜め込んだ僕は梅雨明けのある日、世間からの非難を覚悟で出発することにした。

 まず向かうのは品川駅である。そこから京急本線の快速特急で関東平野を南下していく。車窓からだんだん高層ビルが消え、神奈川に入ると少しずつ山が目立つようになる。同じ首都圏であるのに、なんだか空気が緩んでいるようにも感じる。

 およそ1時間で三崎口駅に到着した。さらにバスに乗り換えて、起伏のある三浦市内を走り、海峡にかかった大きな橋を越えると、そこは神奈川最南端。城ヶ島だ。

城ヶ島の北岸から、対岸の三崎漁港と城ヶ島大橋を望む

 

自然と海鮮豊かな城ヶ島 

 釣り人が多い。それにダイビング客だ。とはいえ平時に比べればずいぶん少ないんだろう。「密」になりようもない。マスク姿でレジャーを楽しむ姿がなんだか異様だ。

「これでもだいぶ、お客さんが戻ってきたんだよ」

 食堂のおばちゃんはマグロ三食丼を運んできて言った。でかい。三崎名物のマグロはたっぷりと肉厚で、刺身、ヅケ、ねぎとろがほかほかの飯に乗っている。

「はいサービス」

 ノリの佃煮も出てきた。ほかにも採れたてのシラスや、その場で焼いてくれるサザエやハマグリなど、城ヶ島は海鮮が豊富だ。それにこの潮風の香りは、コロナでささくれた心をいくらか癒してくれるのだ。

 城ヶ島の南部は岩礁が細かな入り江をつくっている。思い思いの場所にテントを張り、磯遊びをする家族連れが見える。そこからハイキングコースを歩いていくと、神奈川県の最南端の岬に突き当たる。

 目の前には東京湾が広がる。その対岸に、かすかに見える陸地。千葉県だ。かつての安房国である。だからここは安房埼と呼ばれているのだ。こういう端っこ、境界線に来るとやはり昂る。とはいえ、目的地はここではない。僕は橋を渡って本土へと戻り、三崎漁港へと向かった。

 

三崎や城ヶ島に来たらマグロは外せない。観光需要にわずかながら貢献する
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