いまどうすれば海外に行けるのか?
「もうメールは読んだ? そういうわけで7月1日の再オープンは延期になった」
6月も終わりに近くなった日の朝8時過ぎ、寝ぼけながら電話に出ると上司は開口一番そう言った。覚悟はしていた。私の仕事はホテルマンだ。メインターゲットのインバウンド客が戻る目処がまったく立たない状況でホテルの営業を再開させるのは無謀すぎる。収入の面では痛手だが、人事からの説明では雇用調整助成金の支給条件が緩和されたことで、当面暮らせる額の休業手当は出るという。
「最短でも再開は9月なんだから、どこか海外に行ってくれば?」
「この状態で行ける国なんてないですよ」
「そこは君の腕の見せどころだろう」
上司の期待に応えるべく、電話を切るなり調査に入った。
いま海外旅行をするには、この4つが障壁になっている。
1.観光客を受け入れている国はあるのか
2.飛行機は飛んでいるのか
3.新型コロナウイルスの罹患リスク
4.日本帰国後の空港検疫はどうなっているのか
これらをいかにしてクリアするのか。ひとつひとつ考えてみた。
候補に挙がってきたトルコ、ギリシャ、セルビア
まず、日本からの観光客を受け入れている国を調べた。アジアは全滅だ。オーストラリアもダメ。アメリカ大陸に至っては大流行の真っ最中だ。それはヨーロッパ諸国も同様なのだが、中には観光客の受け入れを始めている国があった。セルビア、ギリシャ、トルコの3か国だ。セルビアの事情はよくわからないが、観光立国であるギリシャとトルコが早々に入国制限を解除したのは経済上の理由だろう。2、3週間の旅ならトルコのほうが楽しめるし、過去に7回行っているので不測の事態が起きても対応がしやすい。
トルコの感染状況は、1日1000人程度で減少傾向となっていた。現地の友人に聞いてみたところ、マスクさえしていれば普通に旅行はできるとの返事があった。ただ、5月から6月にかけて数度の外出禁止令が発令されているのが懸念事項だった。旅行中に再発令された場合は、日程の変更を余儀なくされるので、スケジュールには余裕を持たなければならない。
問題は航空便だが、エミレーツ航空やカタール航空など中東系航空会社は成田便の運行を継続していた。トルコ航空も7月から羽田便を再開するという。スカイスキャナーで調べると、成田~イスタンブールはカタール航空が週末限定キャンペーン中で、最安だと往復8万円だった。真夏のイスタンブールにしては破格の安さだ。成田~ドーハ、ドーハ~イスタンブールは毎日運行していて、乗り継ぎ時間も2、3時間と理想的だった。トルコ航空の直行便は往復10万円とやや高く、この時点では週2便だった。