■親子のつながりを感じさせる感性の近さ

「性や暴力をめぐる激しい描写があり、読んでいる間は引きこまれたり突き放されたりして、何とも言えない不安な気持ちにさせられて心地よかった、と櫻井はコメントしています。『破局』には、抱きしめたいほどの虚無を感じたそうです。遠野はBUCK-TICKを小学生時代から聴いていて“ダークな世界観”と評していて、無意識に影響を受けたかも、としていますね」(前出の関係者)

 お互いの仕事について、櫻井が書いてきたのは最初から音楽を念頭に置いた「作詞」で、小説を書くのはどうか、と遠野に尋ねられ「とんでもないです」と答え、小説を書くのは「想像を絶する労力」としていた。

 一方の遠野は、音楽について、大学時代にコピーバンドをやっていた程度だったと話したほか、「2人ともKing Gnuが好き」「遠野が櫻井に『改良』というタイトルを決めるアドバイスをした」など、多くのエピソードが語られた豪華な対談となっている。

「19年12月にBUCK-TICKのコンサートに遠野が訪れ、楽屋でまだ受賞作の『破局』が発表されれる前に“次にお会いするときは、芥川賞作家です”と告げたそうです。櫻井は“あんなにかっこいい言い方はないですよ”と、絶賛していました。

 遠野の次回作について、超能力者を育てる学校の話で、“これまでの2作とは趣の異なる話になる”“来年の早い時期には編集部に渡したい”と、期待を感じさせるコメントをしていました。第3作目が楽しみですね」(前同)

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