Netflixオリジナルドラマ『全裸監督』の脚本家として注目を浴び、11月13日公開の映画『タイトル、拒絶』ではブレイク中の女優・伊藤沙莉を主演に迎え、彼女を通して現代のセックスワーカーにスポットライトを浴びせ公開前から話題をさらうなど、注目を集める映画監督の山田佳奈。そんな彼女が初となる小説作品で扱ったテーマは「家族」。親の介護、相続問題、夫婦のセックスレス、非正規雇用……小説のなかには家族問題に付随する形で、現代社会の問題もつづられている。
ドラマ『全裸監督』では一癖も二癖もある村西とおる監督の半生を過剰な熱を帯びつつもコミカルに表現し、11月13日公開の映画『タイトル、拒絶』では、コロナ禍でも彼ら、彼女らへの差別が議論になったセックスワーカーのリアルを描きだした。そして、初となる小説では「家族」を取り上げた山田佳奈。
そもそも彼女にとって「表現する」ということはどういうことなのだろうか。
「社会で起きている事柄を作品にするときは、やっぱり私の目線、フィルターを通して感じたことを脚本だったり、小説に落とし込むようにはしています。ただ、ひとつの事象に対して、人それぞれの見方とか意見があると思うので、常々誰かを傷つけるような作品でないことを願ってますね」
コロナ禍でも「自粛警察」と「コロナは風邪だ」といったような真逆の価値観、考え方がSNS上で対立し、お互いを罵ったり傷つけあったりする現象が起きていた。
「表現をするって声をあげることなので、意見が違う人もいるんだと思うんですよね。SNSではいろんなやりとりがありますが、表現をする上で、自分とは考え方が違う人を否定するような作品の作り方はしたくない、と思っています。それをしてしまうと、文化だったり、エンターテイメントである必要性がなくなってしまうという思いがありますから。コロナ禍で映画も舞台も“不要不急”とされましたが、文化やエンターテイメントの社会における意義って“人を生かす力”“人を育てる力”だと思っているので、反対意見を否定したら意義がなくなっちゃいますからね」(山田佳奈=以下同)