深川麻衣、高山一実、生駒里奈の個人PV「食シリーズ」の変化【乃木坂46「個人PVという実験場」第13回1/4】の画像
※生駒里奈/画像は本サイトの記事(https://taishu.jp/articles/-/56269)より抜粋

乃木坂46「個人PVという実験場」

第13回 中村太洸作品の豊かさ 1/4

■デビューシングルの個人PVで企画の特性をつかみ取る

 乃木坂46の草創期から、MVと個人PVの双方でコンスタントに作品を発表し続けてきた作家に中村太洸がいる。AKB48や姉妹グループ、そして派生として誕生した乃木坂46まで手広くカバーする中村のフィルモグラフィーを振り返るとき、とかく目を引くのはその作品数と手法の多彩さである。

 AKB48ならば高橋栄樹、欅坂46であれば池田一真や新宮良平といったように、それぞれのグループには、トレードマーク的なMVを手がける代表的作家がいる。乃木坂46のMVに関して言えば、スタイリッシュさを担ってきた代表的なディレクターとしてしばしば名が挙がるのは丸山健志であり、またドラマ型MVを象徴する作家であれば柳沢翔らが歴史を作ってきた。

 おそらく中村は、数多くの作品を手がけながらも、そのような特定のグループにとってのシンボリックなディレクターとは異なる位置にいる。しかし、AKB48や姉妹グループ、そして乃木坂46などいくつものグループが映像作品の豊かさを担保するうえで、多作な中村が果たしてきた功績は小さくない。特に乃木坂46については、グループが己のカラーを模索する段階から、いくつもの作品を手がけ貢献してきた。

 たとえばその手際は、初めての個人PVですでにあらわれている。

 乃木坂46はデビューシングル『ぐるぐるカーテン』から個人PVをスタートさせているが、いまだこの企画がいかなる財産になるのかも覚束ない当時のこと、集められた33作のショートフィルム群は、総体としてどことなくぎこちなさを持っていた。その中で、気負いなくこの企画の特性をつかみ、スマートな作品を提示した作家の一人が中村だった。

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