窪田正孝
窪田正孝

 窪田正孝(32)主演の連続テレビ小説エール』(NHK)が27日、ついに最終回となる120話を迎えた。

 最後は異例の“コンサート形式”。主人公・裕一のモデルとなった古関裕而さんが生み出した数々の名曲を、東京・渋谷のNHKホールに集った豪華キャストたちが次々に披露していくという、何とも贅沢な15分間で締めくくられた。

 『エール』は昭和の音楽史を代表する作曲家である古関さんと、妻で歌手としても活躍した金子氏をモデルにした、音楽とともに生きた夫婦の物語。この日のコンサートは“視聴者へのご褒美”的な意味合いが強いことを考えると、この物語の実質的な最終回は、前日に放送された119話となる。

 晩年、病床に伏した裕一の妻・音が「海が見たい」とこぼす。裕一に体を支えられて歩く音は弱々しい足取りだが、その足元に砂浜があらわれ、次第に力強い歩みへと変わっていく。そして、若い頃の姿に戻った2人が、タイトルバックにもなっている福島・豊橋の海岸を無邪気に駆け回る――「音、会えてよかった。音に会えなかったら、僕の音楽なかった。出会ってくれてありがとね」「私も、あなたといられて幸せでした」。

 約8か月もの間、裕一と音を見守ってきた視聴者にとって、これ以上ないという万感の“ラストエール”。チーフ演出の吉田照幸監督(50)は、「2人の最後をご覧になった視聴者の皆さんが、それぞれに自分の人生を振り返るような時間にしたかった」と語っているが、その狙いどおり、受け手一人一人の感じ方や想像の余地を残す出色のラストだったように思う。

 思えば『エール』は、最初から前途多難な船出だった。放送前から脚本家の交代騒動が取り沙汰されたほか、初回で描かれた主人公2人の“原始人”扮装やフラッシュモブを用いた斬新な演出も一部で不評を買うなど、広瀬すず(22)主演の前々作『なつぞら』や戸田恵梨香(32)主演の前作『スカーレット』と比べ、前評判や序盤の期待値はさほど高くなかった。しかし、放送を終えた今、SNS上には「朝ドラ史上最高の作品」「今まで見た朝ドラの中で一番ハマった」と絶賛の声があふれている。なぜ評価が一変したのか。その裏には“3つの奇跡”がある。

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