乃木坂46「個人PVという実験場」
第14回 VFXを通して乃木坂46の映像作品を拡張する荒船泰廣作品 3/4
■バトルものも「荒船らしさ」を失わない
乃木坂46の個人PVにおいて荒船泰廣は、VFXを駆使しながら終末的な世界観や怪異をSF的ヴィジュアルで描きつつ、それらの要素をほのぼのとした日常性を掛け合わせて、大仰であればあるほど微笑ましさを増すようなドラマ作品を作ってきた。ここまで見てきた能條愛未「アンゴルモアの大王の娘」(https://taishu.jp/articles/-/83221)や、山下美月「さよならポルターガイスト」(https://taishu.jp/articles/-/90737)は、そうした具体例である。
一方で荒船は、それらVFXによる視覚化と親和性の高い、とあるポピュラーなモチーフを個人PVに持ち込んでもいる。それは、女性キャラクターを戦闘の主体としたバトルものである。ただしここでもまた、現実離れした戦闘とごく日常的な生活や動機づけとを結びつけてみせるのが、荒船の持ち味である。
その系譜の作品に位置する一編が、荒船がZUMIとともに監督を務めた斉藤優里主演「斉ボーグ優里」である。