勝つことを宿命づけられながら、4タテの完全敗北。地に落ちた名声を取り戻すべく、名将は退路を断って来季へ歩みを始めた!
セ・リーグを独走で連覇しながら、日本シリーズで史上初となる2年連続4連敗の屈辱を味わった原巨人。ソフトバンク優位の声は戦前からあったものの、完膚なきまでに叩きのめされての敗北に、セ・リーグ関係者には衝撃が走った。
「相手とケンカしてでも勝つぞ、という空気が感じられなかった。ソフトバンクとは意識の差が大きい」
野球評論家の江本孟紀氏がこう語るように、セの王者は覇気がない戦いぶりに終始。打線は最低打率、最少得点、最少安打と“日本シリーズ史上ワースト”尽くしで、投手陣もエースの菅野智之さえ通用せず、なす術なく敗れた。今季の日本シリーズを取材した、スポーツ紙のベテラン記者は、ため息まじりに、こんな感想を述べる。
「見ていて、つらかった。去年以上に、今年は力の差を見せつけられたシリーズでした。目につくのは150キロ台のストレートに、大飛球のホームランと、ソフトバンクのパワー野球のすごさばかり。まるで、昔の日米野球を見ているような感覚ですよ。パの選手は、ふだんから広い球場でやっているから、底力が違いましたね」
確かにセ・リーグは横浜スタジアム、神宮、甲子園と両翼90メートル台の狭い球場が多い一方、パ・リーグは楽天宮城球場を筆頭に、両翼100メートル、センター122メートルクラスばかりで、スタンドが遠い。
「広さに加え、札幌ドームや大阪ドームはフェンスが高く、スタンドインするには強く振る必要があります。結果、この10年ほどで、パは2ストライクまで思いきり振り切るスタイルが色濃くなりました」(前同)
その象徴が、京セラドームで行われたシリーズ2戦目、ソフトバンクの9番に入ったキャッチャー、甲斐拓也が放った本塁打だろう。3点リードで迎えた2回1死走者なしの場面で、甲斐は今村信貴の2球目を強振し、左中間の最深部に運んだ。
「セのセオリーにはない攻撃で、巨人のベンチも驚いていました。セの下位打線なら、まず塁に出るため、単打狙いで当てにいく場面。あるセの球団スコアラーは“ソフトバンクは引っ張った打球の速さが違う”と、目を丸くしていました」(スポーツ紙巨人担当記者)