『POPEYE』『ファミ通』でおなじみのイラストレーター・松下進インタビュー「きっかけはビートルズ」の画像
松下進(撮影・弦巻勝)

 基本的に、好きなことはずっと変わらず、それを延々とやり続けるタイプです。物心ついたときから絵を描くのが好きだったし、中学生のときに好きだった『シャドウズ』というバンドの曲は、今でも演奏しています。映画だと、“SFX”なんて言葉がまだ登場する前から特撮映画が大好きで、『スター・ウォーズ』のグッズは仕事部屋にあふれかえっている。要するに、代わり映えしない男なんです、僕は(笑)。

 でもときどき、新しいものと衝撃的な出会いをすることがある。

 最近で言えば、『ブラックピンク』という韓国の4人組ガールズグループですね。音楽関係の仕事をしている妻が、あるとき「面白いグループが出てきたよ」と教えてくれて、聴いてみたんですが、最初に『ビートルズ』に出会ったときくらいのインパクトを受けました。

 音楽的にすごく新しいと思ったし、なにより彼女たちの素晴らしいパフォーマンスに魅せられた。だから、坐骨神経痛でヒーヒー言いながら、東京ドームのコンサートにも行きましたよ(笑)。ブラックピンクのおかげで、それまで興味がなかったラップなんかも聴くようになったし、音楽の新しい扉が開いた気がします。

 絵については、エアブラシとの出会いがものすごく大きかった。実は、エアブラシというものの存在を知ったきっかけは、ビートルズでした。1970年頃に活躍したアラン・オルドリッチというイラストレーターが、ビートルズの曲にちなんだ絵を描いていたんです。そんな彼の個展が池袋の西武百貨店であるというので行ってみたら、これがもう圧倒的で……。

「いったいどうやって描いているんだろう?」と思いながら眺めていたら、たまたま僕の隣で美大の学生さんが二人で語らっているわけです。目では絵を見ながら、耳は彼らの会話にくぎづけ。「大変なんだよね、エアブラシで絵を描くのは。だから、やれる人はなかなかいないんだよ」と彼らが話しているのを聞いたときに、「よし、この手法でやろう!」と僕は決めました。

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