■最終話目前で中村倫也の真骨頂!目にうっすらと涙をため……

 15日に放送された最終回目前の第9話で、ようやく自分の気持ちが樹木に向いていることを自覚し始めた浅羽。樹木を食事やデートに誘うが、そのやり方もおよそフェアとはいいがたい(“樹木と付き合っている”と宣戦布告した新谷を完全無視)。しかも、物語終盤、新谷が樹木からの告白の返事を今か今かと待っているところにあらわれるのだから、どこまでも間の悪い男だ。

 駆けつけた浅羽は、息を切らし、髪を乱し、伝えたいはずの言葉もうまくまとまらず、「移動販売車だって、今度から…。そんなこと話しにきたわけじゃないんだ」としどろもどろ。理性を超えた初めての感情に、浅羽自身の戸惑いがのぞく。普段のスマートで余裕たっぷりの姿はどこへやら、なりふり構わぬ捨て身の告白。たとえ唯一の友人・新谷の目の前であったとしても、どんなにカッコ悪くても、今、伝えなくてはいけないのだ。「俺には君が必要だ」と。

 目にうっすらと涙をため、うわずった声色で気持ちを伝える浅羽の姿は、まるで初めて恋を知った少年のようだ。このワンシーンで、見てくれだけの鈍感男が“不器用で愛おしい”魅力的なキャラクターへと変貌を遂げた。この真っすぐな告白に心を動かされない女性は、恐らくいない。脚本やキャラ造形のアラを吹き飛ばし、一瞬にして新谷と同じ土俵(もしくはそれを超えたところ)に立ったこのシーンこそ、中村の真骨頂。しっかりとプロの仕事を見せてくれている。

 それを裏付けるように、SNS上でも「涙ぐんでの告白に感動」「すごくグッときた」「もってかれた」と絶賛の声が相次いだが、思えば中村は、昨夏の『凪のお暇』(TBS系)でも、無自覚に女性を翻弄していた罪な男が初恋を知り、変わっていく姿を繊細な演技で表現していた。今回の浅羽という難易度の高いキャラクターも、中村ならきっとやってくれるだろうという制作サイドの絶大な信頼から生まれたのかもしれない。

 キャストたちの熱演に呼応するかのように、第9話の平均視聴率(世帯)は10.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と前話から1.2ポイントもアップ。初めて2ケタの大台に乗せ、番組最高視聴率を記録した。

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