白い衣装、轟音、青いライト、声援。頭の中をめぐっている昨日までのこと。ときどき、時間が止まったような瞬間になること。アイドルのライブに動揺させられるあの気持ち、とにかくじっとしていられないような、人生がまだ動き出すあの気持ち。

 ライブ後、チェキの列を見ながらちょっと迷い、今日は帰ろうと思いました。ひとりの部屋から人生がまた動き出したばかりで、嬉しさや衝撃が止まらなかったからです。こんな気持ちではとても電車には乗れない。かと言って、どこかに入ってゆっくりと座る気にもなれません。とにかく、ひとりでこの気持ちをなんども確認して、大切にかみしめたい。

 マフラーを巻き直し、コートのポケットに手を入れ、いてもたってもいられない気持ちをかかえながらとにかく歩き始めました。家まで歩いて帰ろう、急にそう思い、まだドキドキとしたままの心臓に合わせてぐんと足を早めます。

 駅前、だれかが弾き語り、だれかが「久しぶり」と言い合い、だれかがバスを待ち、街はざわめいていました。iPhoneでYouTubeを開き、昨日の夜に何度もリピートし続けた『バタフライエフェクト』を再生。止まってはまたどこかへ走り出すバスを見送りましたが、イヤホンがその音をかき消すので世界中がエフェクトをかけられたように美しく見えます。

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