■MVPの栗原は“絶好調男”!

――しかし、巨人は前年同様、日本シリーズに進出したものの、ソフトバンク相手に屈辱の4連敗。最大の敗因は何だと思いますか?

達川 極論を言えば、第1戦の2回表、先発の菅野智之が5番の栗原からツーランを打たれたことで決まってしまったよ。1回表に3番の柳田をスライダーで三振に打ち取って、三者凡退で終わったときは、「ソフトバンクは簡単に点が取れないな……」と思ったんだけどね。でも、栗原に対しては、ツーボールからの3球目のスライダーが甘く入って、打たれてしまった。菅野ほどのピッチャーになれば、日本シリーズで緊張するなんてことは、まずないだろう。だから、もしかしたら、ほとんど対戦したことがない若手の栗原を見下ろして、“置きにいった”のかもしれないね。同じスライダーでも、柳田に対しては「スライダーー!」だったのに、栗原には「スラ~イダ~~」って感じだったから(笑)。

 巨人としては、まだ2回表で2点リードされただけだったけど、ソフトバンクの先発はエースの千賀滉大。150キロ以上の球をボンボン投げ込む、パ・リーグを代表するピッチャーが相手だと考えると、巨人の中でも優秀な選手ほど、早い段階で「これはまずいな……」という焦りの気持ちが生まれたんじゃないかな。それに、ヘッドコーチ時代から知っているけど、栗原は勢いに乗ると怖い選手なんだよ。元巨人の中畑清さんみたいに、「絶好調~!」っていう感じになる(笑)。だから、あのホームランがきっかけになって、その後も打ちまくったし、シリーズMVPまで獲得できたんだと思うよ。

 逆に巨人にとっては、エースの菅野が栗原に打たれて負けてしまったのが誤算だった。ソフトバンク打線を抑えられるのは菅野しかいなかったから、結局は菅野頼みだったし、日本シリーズで1回しか登板できなかったのがすべてだろうね。野球評論家にしてもマスコミにしても、日本シリーズの前から、「両エースが先発する予定の第1戦を制したほうが優勝する」という予想が多かった。でも、もしノムさんが巨人の監督だったら、菅野を千賀にぶつけず、第2戦の先発にしていたかもしれないよ。昔は、まずは1勝1敗を目指すという考え方があったからね。ただ、原監督は逃げずに向かっていくタイプだから、そんなことは頭の中になかっただろうなあ。

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