丸山ゴンザレス「考古学と裏社会は近い」麻美ゆまのあなたに会いたい!〔後編〕の画像
丸山ゴンザレス

 前回に続いて、ジャーナリスト・丸山ゴンザレスさんとの対談です。世界中の裏社会や危険地帯を潜入取材する丸山さんですが、実は学生時代に「考古学」を学び、修士号まで持つ学者さん。初の考古学エッセイ『MASTERゴンザレスのクレージー考古学』も出版されました。そこで、丸山さんが大学院で研究されていた横穴墓の遺跡、埼玉県吉見町にある“吉見百穴”を案内してもらいながら、ゴンザレス流考古学の楽しみ方を教えていただきました。

ゆま「考古学と裏社会が近いって!?」

丸山「まあ、持論というか、個人的に思っている感覚ではあるんですけどね。ピンと来たきかっけは、学生時代に行った遺跡調査で見つけた“盗掘”の跡です」

ゆま「盗掘!? それって、遺跡などに勝手に入って発掘しちゃうっていう違法行為ですよね?」

丸山「そう。発掘現場では不自然な窪みなんかが、けっこう見つかるんですよ。現場の、そんなアンダーグラウンドな匂いに非常に興味をそそられたんです」

ゆま「今の丸山さんの仕事に通じるものがあります」

丸山「確かに。盗掘なんて、学者の領域ではないですよね。太古の生活を検証するのが考古学ですから。実際、学生時代に興味がアウトローな方向に向かっていった末に一時期、盗掘を卒論のテーマにしようしたほどで……そのときは師匠や先輩方から“お前はバカか?”と、お叱りを受けました(笑)」

ゆま「そんな内容の本なんですね。今回の新刊は」

丸山「ええ。盗掘があるということは、遺物を売りさばくブローカーもいるということ。そんなブラックマーケットを突き止める旅のルポも入ってます。まあ、考古学になじみのない方でも、気軽に読める内容にしたつもりです」

ゆま「がっつり宣伝をぶっ込んできましたね(笑)。でも、難しい学術的な話より面白そう!」

丸山「ありがとうございます。さて、ゆまちゃん。こちらの吉見百穴ですが、見どころは横穴墓群だけではないんです」

ゆま「何があるんですか?」

丸山「実は、太平洋戦争のときに作られた『地下軍需工場跡』があるんです。残念ながら現在は、崩落の恐れがあって中に入れないんですが……入り口だけでも見てください」

ゆま「うわあ、すごっ! 大きい洞窟になってる!!」

丸山「閉鎖される前に入ったことがあるんですが、中は、とにかく広い。数百メートルは続いていますよ」

ゆま「ここでは何を作っていたんですか?」

丸山「飛行機の部品です。ここなら上空から偵察されても、軍需工場だと思われませんからね」

ゆま「歴史的な遺跡がある場所でもあるのに、軍需工場を作ったんですね」

丸山「古墳時代に横穴が掘られたように、この辺り一帯は凝灰質砂岩という柔らかい岩盤でできているので、掘りやすいんです。だから工場を作るのに最適だったんでしょう。また、ここは戦時中、横穴が防空壕としても使われていたんです」

ゆま「へえー。ちなみに、太平洋戦争中のものを調べるのも考古学?」

丸山「はい。文字でなく現場に残された物から歴史を解き明かすのが考古学なので、時代は関係ありません」

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