■石原さとみの新境地か

 主人公が癌に冒されているにもかかわらず、劇中の病の表現は薬の服用シーンなど最小限で、日々のたわいのない生活を中心に描かれている。また、鬼子母神や安曇野の風景、劇伴(劇中で流れる音楽)がおだやかで、優しい。

 だからこそ、父と娘の時間が愛おしく思える。父に世話を焼かせること、ちょっとした心配をかけること、一緒に母の思い出の料理を作ることなど、どんな言葉よりも“幸せ”を感じさせる。これこそが、娘から父への“最高の贈りもの”だったのかもしれない。

 そんな岡田の脚本に対し、視聴者は「セリフもネタも古いのに、ホームドラマであってもしっかり伏線回収する岡田ワールドに感服しきり」「なにげに一番最後をはっきり描かなかった描写も視聴者に結末を預ける形で余韻がすごい」などと、大いに満足していたようだ。

 また、石原の演技にも注目が集まり、「デキる女で鼻につく役の印象が強い彼女だけど、本来こういう抑えた演技ができるんだよね」「こういう地味な役でいい演技する石原さとみさんを久しぶりに見た」「最近のドラマのキャラとまったくの別人に見える。演じ分けが完璧」などと、称賛の声が寄せられた。

 さらに、今回はチャームポイントの肉厚な唇を強調することはなく、すっぴんかと思わせる薄めのメイクで、「どんなに地味でも化粧薄くても石原さとみはかわいくてキレイ」「やっぱり石原さとみはすっぴん風がいいな。バチバチに化粧してるのはキツく見える」などと好評だった。

 最近は、上から目線の強気なキャラを演じることが多かった石原だが、2020年に一般男性と結婚したことで、路線変更を狙っているのかもしれない。今回のドラマが好評だったことで、21年は新しい石原が見られるだろう。(ドラマライター/ヤマカワ)

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