作中で松村がみせるおかしな振る舞いは、直後のドライブ中にどのような悲劇が起こるかをあからさまに予測させるフリの役割を果たし、やがて誰もが想像した通りのアクシデントでバッドエンドを迎える。
ここで松村があえて演じてみせる突飛な振る舞いが、体裁上は真面目であるはずのドラマにそれとなくフィットしてしまうのは、「教習所で視聴するビデオ」というこの特殊なジャンルのもつある種の不自然さを、森が巧みに利用してみせているためだ。
そして、この架空の教習ビデオは最後に、“乃木坂46のメンバーとして活躍する松村沙友理”の姿を「バッドエンドな展開さえなければ実現したはずの、架空の輝かしい未来」として映し出す。
あくまでバカバカしいパロディであるはずの映像のラストに、ふいに差し込まれたこのリアルとフィクションの倒錯によって、本作は思いがけぬ不可思議さをもって終幕を迎える――。
森翔太の手がける個人PVは、もちろん既存ジャンルを独自のスタイルで飲み込んでいくその手際に特徴がある。ただしまた回を重ねる中で、パロディ的な手法はそのままに、よりメンバー自身の特性へとクローズアップした作品を生み出していく。
乃木坂46「個人PVという実験場」
- 第1回 「演じる者」としての乃木坂46 1/4
- 第1回 「演じる者」としての乃木坂46 2/4
- 第1回 「演じる者」としての乃木坂46 3/4
- 第1回 「演じる者」としての乃木坂46 4/4
- 第2回 高橋栄樹が描いた「アイドル」と「個人PV」の自由 2/4
- 第2回 高橋栄樹が描いた「アイドル」と「個人PV」の自由 2/4
- 第2回 高橋栄樹が描いた「アイドル」と「個人PV」の自由 3/4
- 第2回 高橋栄樹が描いた「アイドル」と「個人PV」の自由 4/4
- 第3回 伊藤万理華「乃木坂46個人PV」の世界を象徴する存在 1/4
- 第3回 伊藤万理華「乃木坂46個人PV」の世界を象徴する存在 2/4
- 第3回 伊藤万理華「乃木坂46個人PV」の世界を象徴する存在 3/4
- 第3回 伊藤万理華「乃木坂46個人PV」の世界を象徴する存在 4/4
- 第4回 乃木坂46映像作品で湯浅弘章監督が描く「時のうつろい」1/4
- 第4回 乃木坂46映像作品で湯浅弘章監督が描く「時のうつろい」2/4
- 第4回 乃木坂46映像作品で湯浅弘章監督が描く「時のうつろい」3/4
- 第4回 乃木坂46映像作品で湯浅弘章監督が描く「時のうつろい」4/4
- 第5回 乃木坂46のドラマ作品を担う柳沢翔 1/4
- 第5回 乃木坂46のドラマ作品を担う柳沢翔 2/4
- 第5回 乃木坂46のドラマ作品を担う柳沢翔 3/4
- 第5回 乃木坂46のドラマ作品を担う柳沢翔 4/4
- 第6回 乃木坂46の映像作品に『可笑しみ』をもたらした山岸聖太 1/5
- 第6回 乃木坂46の映像作品に『可笑しみ』をもたらした山岸聖太 2/5
- 第6回 乃木坂46の映像作品に『可笑しみ』をもたらした山岸聖太 3/5
- 第6回 乃木坂46の映像作品に『可笑しみ』をもたらした山岸聖太 4/5
- 第6回 乃木坂46の映像作品に『可笑しみ』をもたらした山岸聖太 5/5
- 第7回 乃木坂46を象徴する人物だった白石麻衣の個人PV史 1/4
- 第7回 乃木坂46を象徴する人物だった白石麻衣の個人PV史 2/4
- 第7回 乃木坂46を象徴する人物だった白石麻衣の個人PV史 3/4
- 第7回 乃木坂46を象徴する人物だった白石麻衣の個人PV史 4/4
- 第8回 3期生にとっての個人PV 1/4
- 第8回 3期生にとっての個人PV 2/4
- 第8回 3期生にとっての個人PV 3/4
- 第8回 3期生にとっての個人PV 4/4
- 第9回 山田篤宏監督作品 1/3
- 第9回 山田篤宏監督作品 2/3
- 第9回 山田篤宏監督作品 3/3
- 第10回 特異な個性を持つドラマ型作品を担ってきた頃安祐良 1/5
- 第10回 特異な個性を持つドラマ型作品を担ってきた頃安祐良 2/5
- 第10回 特異な個性を持つドラマ型作品を担ってきた頃安祐良 3/5
- 第10回 特異な個性を持つドラマ型作品を担ってきた頃安祐良 4/5
- 第10回 特異な個性を持つドラマ型作品を担ってきた頃安祐良 5/5
- 第11回 4期生にとっての個人PV 1/4
- 第11回 4期生にとっての個人PV 2/4
- 第11回 4期生にとっての個人PV 3/4
- 第11回 4期生にとっての個人PV 4/4
- 第12回 今泉力哉作品が描く他者との関係性の築き方 1/4
- 第12回 今泉力哉作品が描く他者との関係性の築き方 2/4
- 第12回 今泉力哉作品が描く他者との関係性の築き方 3/4
- 第12回 今泉力哉作品が描く他者との関係性の築き方 4/4
- 第13回 中村太洸作品の豊かさ 1/4
- 第13回 中村太洸作品の豊かさ 2/4
- 第13回 中村太洸作品の豊かさ 3/4
- 第13回 中村太洸作品の豊かさ 4/4
- 第14回 VFXを通して乃木坂46の映像作品を拡張する荒船泰廣作品 1/4
- 第14回 VFXを通して乃木坂46の映像作品を拡張する荒船泰廣作品 2/4
- 第14回 VFXを通して乃木坂46の映像作品を拡張する荒船泰廣作品 3/4
- 第14回 VFXを通して乃木坂46の映像作品を拡張する荒船泰廣作品 4/4
- 第15回 既存の表現を自身の表現とする方法論 1/5
- 第15回 既存の表現を自身の表現とする方法論 2/5
- 第15回 既存の表現を自身の表現とする方法論 3/5
- 第15回 既存の表現を自身の表現とする方法論 5/5
- 第16回 ナイロン100℃とのリンク 1/5
- 第16回 ナイロン100℃とのリンク 2/5
- 第16回 ナイロン100℃とのリンク 3/5
- 第16回 ナイロン100℃とのリンク 4/5
- 第16回 ナイロン100℃とのリンク 5/5
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