作中で松村がみせるおかしな振る舞いは、直後のドライブ中にどのような悲劇が起こるかをあからさまに予測させるフリの役割を果たし、やがて誰もが想像した通りのアクシデントでバッドエンドを迎える。

 ここで松村があえて演じてみせる突飛な振る舞いが、体裁上は真面目であるはずのドラマにそれとなくフィットしてしまうのは、「教習所で視聴するビデオ」というこの特殊なジャンルのもつある種の不自然さを、森が巧みに利用してみせているためだ。

 そして、この架空の教習ビデオは最後に、“乃木坂46のメンバーとして活躍する松村沙友理”の姿を「バッドエンドな展開さえなければ実現したはずの、架空の輝かしい未来」として映し出す。

 あくまでバカバカしいパロディであるはずの映像のラストに、ふいに差し込まれたこのリアルとフィクションの倒錯によって、本作は思いがけぬ不可思議さをもって終幕を迎える――。

 森翔太の手がける個人PVは、もちろん既存ジャンルを独自のスタイルで飲み込んでいくその手際に特徴がある。ただしまた回を重ねる中で、パロディ的な手法はそのままに、よりメンバー自身の特性へとクローズアップした作品を生み出していく。

乃木坂46「個人PVという実験場」

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