生田絵梨花
生田絵梨花

乃木坂46「個人PVという実験場」

第15回 既存の表現を自身の表現とする方法論 5/5

■「定番の形式」をパロディ化する手法

 森翔太は乃木坂46の個人PVにおいて、既存の映像ジャンルをパロディ化する手法を繰り返し用いてきたが、このスタイルを採用するうえで鍵になるのは、参照元のジャンルが内包している「よくある定番の形式」をいかにすくいとってみせるかということだ。

 先々週の更新回(https://taishu.jp/articles/-/91574)でふれた斉藤優里「愛の二等辺三角形」ではレトロな青春ドラマ、前回(https://taishu.jp/articles/-/91730)の松村沙友理「教習所で見せられる保険加入のビデオ」では自動車の運転免許証更新時に視聴するビデオが参照元になっているが、それぞれの映像ジャンルに関してイメージされる典型的なテイストが多くの人々に共有されているからこそ、そのイメージを前提にしてさらに大仰な演出や展開を付加して笑いを生み出すことができる。

 そうした「定番の形式」がとりわけ顕著に現れるジャンルを参照して制作されたのが、20枚目シングル『シンクロニシティ』収録の、与田祐希個人PV「ホラー映画で最初に死ぬやつ」だ。

https://www.youtube.com/watch?v=5P8FGIm-G1c
(※与田祐希個人PV「ホラー映画で最初に死ぬやつ」予告編)

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