■奈未が仕事と結婚を両立できない理由

 潤之介のプロポーズを受けた奈未だが、徐々に現実的な考え方をするようになる。勢いでOKしたものの、結婚して金沢に付いていくとなると仕事を辞めることになる。両方上手くやる方法はないの?とも思うが、相手によっては究極の選択をしなければならないことがある。特に女性には、人生において究極の選択が何度もあるように思う。仕事、結婚、出産。

 どれを選択したかで自分の人生は決まるし、どこかで『自分にはなかった人生』を想像することが何度も何度も出てくる。それでも生きていかなければならない。だからこそ、ちゃんと悩んで選択しなければならない。

 そして、奈未は仕事を選んで、潤之介も、潤之介との幸せな時間も捨てた。少し前までの奈未では考えられない選択。自分でも望んでいたと言っていた「人並みの幸せ」どころか最高級の幸せを選ばなかった。潤之介の寝顔にかわいいって呟いたり、ベッドでの甘いキスとか、隣で一緒に眠ることで温もりを感じるような、穏やかな幸せを選ばなかった。

 そして、密かに自分を選んでもらえないことを潤之介が察していたのが切ない。都心のビルの屋上で、美しい星に包まれて、その星々よりもまぶしく輝いた指輪。それを左手の薬指から外して返す奈未と、一人残されて涙を流す潤之介が痛々しい。一方で、潤之介を演じる玉森の表情に目を見張ってしまう。肌がきれいだからなのだろう、一本線になる涙が美しすぎた。

  1. 1
  2. 2
  3. 3