乃木坂46「個人PVという実験場」
第18回 個人PVに現れる「都市」1/6
■「ぶらり旅」をテーマにした作品の中の東京
乃木坂46の映像作品には、しばしば「都市」が強い存在感をもって浮上してくる。というよりも、被写体の人物を起点にしながら、背景にある街の姿かたちの一端が顕在化してくることは、映像作品においてもスチールにおいても、ジャンルを問わず普遍的なことといっていい。
先週更新分(https://taishu.jp/articles/-/93681)で言及した「僕は僕を好きになる」MV、あるいは櫻坂46「偶然の答え」MVといった直近の作品にいずれも渋谷・スペイン坂が登場しているように、坂道シリーズにおいても演者であるメンバーの背後には頻繁に、ストーリーを喚起する装置としての東京が現れる。
乃木坂46の初期作品のなかで、明確に東京の都市と結びついた作品群がみられるのが、3枚目のシングル『走れ!Bicycle』収録の個人PVである。幾度かふれているように、同シングルの個人PVでは、作品全体を貫く統一テーマとして「ぶらり旅」が掲げられていた。
収録された作品は台湾や韓国のほか、北海道や九州・沖縄など、国境をまたぎつつ広い地域を舞台にしている。一方で、全作品のうち1/3ほどは東京にロケーションをとっており、東京拠点のグループであることを考えれば、それらはいくぶんミクロな“旅”といえる。
特にビル街としての東京に被写体を配置した、とてもポピュラーなイメージを描いてみせるのは、西新宿を舞台にした川村真洋の個人PV(監督:山田智和)である。